
「領収書の山をクラウド会計に入力する時間が毎月20時間を超えている」「税理士に記帳もお願いしているが、仕訳内容が見えず不安」——中小企業・個人事業主のバックオフィス現場でよく聞く悩みです。
記帳代行は、こうした”仕訳入力だけの負荷”を切り離すための最もシンプルで安価な外注手段です。本記事では、記帳代行の料金相場・依頼できる業務範囲・経理代行との違い・失敗しない業者選びを、年商1〜30億円規模の中小企業を支援してきた合同会社種火の現場感覚で整理します。
記帳代行とは?「仕訳だけ外に出す」最短の手段
記帳代行とは、領収書・請求書・通帳データなどの取引証憑から、会計ソフトへ仕訳を入力する業務を外部の専門会社に委託するサービスです。月次決算や支払業務などは含まず、”仕訳入力”に特化しているのが特徴です。
① インボイス制度・電子帳簿保存法で仕訳作業量が増加
② クラウド会計普及で証憑を遠隔共有しやすくなった
③ 税理士の記帳代行が高額化、より安価な専業会社の需要増
記帳代行と経理代行の違い
混同されがちですが、対応業務の範囲が大きく異なります。
| サービス | カバー範囲 | 月額目安 |
|---|---|---|
| 記帳代行 | 仕訳入力のみ | 1〜5万円 |
| 経理代行 | 記帳+月次決算+支払+給与 | 5〜20万円 |
| 税理士の記帳代行 | 仕訳+決算+税務申告 | 3〜10万円 |
記帳代行は”仕訳だけ”なので最も安価ですが、月次試算表や経営分析は付きません。月次レベルで経営判断に使える数字が欲しい場合は経理代行を検討してください。
記帳代行の料金相場
料金体系の3パターン
| 体系 | 仕組み | 向く会社 |
|---|---|---|
| 従量課金(1仕訳〇円) | 仕訳数×単価 | 仕訳数が月によって変動する会社 |
| 月額固定 | 仕訳数に上限あり | 毎月の取引量が安定している会社 |
| ハイブリッド | 基本料金+超過分従量 | 繁閑差がある会社 |
依頼量別の相場表
| 月間仕訳数 | 月額相場 | 対象規模 |
|---|---|---|
| 〜50仕訳 | 5,000〜15,000円 | 個人事業主 |
| 50〜100仕訳 | 1〜2.5万円 | スタートアップ |
| 100〜300仕訳 | 2.5〜5万円 | 年商1〜3億円 |
| 300〜500仕訳 | 5〜8万円 | 年商3〜5億円 |
| 500仕訳超 | 経理代行推奨 | 経理代行へ移行を検討 |
記帳代行で依頼できる業務内容

依頼可能な業務は4つに大別されます。
① 会計ソフトへのデータ入力(仕訳入力)
領収書・請求書・通帳明細・カード明細を会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生)へ仕訳として入力します。記帳代行の中核業務です。
② 帳簿の作成と管理
総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳などの各種補助簿をソフト内で自動生成します。インボイス・電帳法の保存要件を満たすファイル保管までセットにする会社も増えています。
③ 月次試算表の作成(オプション)
一部の記帳代行会社は月額+1〜3万円のオプションで月次試算表の作成まで対応します。ただしここまで必要なら、初めから経理代行を選んだ方がトータルで安上がりです。
④ 決算書類の下準備
決算整理仕訳の一部(前払費用・経過勘定など)を代行するケースがあります。税務申告は税理士の独占業務のため別契約が必要です。
記帳代行のメリット・デメリット
メリット 4点
- 圧倒的な低コスト:月1〜3万円で仕訳入力から解放される
- 経営者・社員の時間解放:月20時間が他業務にシフト
- 専門家の正確性:仕訳ミスが激減、税務調査耐性が上がる
- 繁閑差に柔軟対応:従量課金なら閑散期はコストも下がる
デメリット 3点と対策
記帳代行の最大の落とし穴は「月次試算表が出ないので経営状況がわからない」こと。仕訳は入っていても、”今月の利益は?”の質問に即答できない状態だと意味がありません。月次試算表まで欲しいなら、最初から経理代行を選ぶのが結果的に安いケースが多いです。
| デメリット | 対策 |
|---|---|
| 社内にノウハウが残らない | 年1回「勘定科目の考え方」レクチャーを付ける |
| リアルタイムで業績把握が困難 | 月次試算表オプション or 経理代行への切替 |
| 情報漏洩リスク | NDA締結・Pマーク/ISMS取得業者を選ぶ |
記帳代行で「失敗する」よくある3パターン
パターン1:最安値業者で”やり直し”が発生
1仕訳44円の最安値業者に依頼 → 勘定科目の使い方が自社実態と合わず、決算時に税理士から全件やり直しを指示され、追加30万円。価格差はKW単価±20円の世界、年間でも数万円なので、安さより精度・レスポンスを優先すべきです。
パターン2:クラウド会計未対応で紙・FAXやり取り
激安の昔ながらの業者では、領収書を紙・FAXで送付する運用のケースがあり、結局社内工数が減りません。freee・マネーフォワード・弥生いずれかに対応し、書類はSlack/Dropboxで共有できる業者を選びましょう。
パターン3:質問しても返信が1週間後
月次運用で「この取引はどの勘定?」という質問への返信が遅いと、決算直前に溜まった仕訳で大混乱。質問レスポンスSLA(例:2営業日以内)が明記されている会社を選んでください。
信頼できる記帳代行業者の選び方【10項目】
- □ freee・マネーフォワード・弥生のいずれかに対応
- □ 質問レスポンスSLA(24時間 or 48時間)が明示
- □ NDA締結・Pマーク or ISMS取得
- □ 税理士が在籍 or 顧問税理士と連携可能
- □ 料金体系(従量/固定/ハイブリッド)が自社に合う
- □ インボイス・電帳法への対応実績
- □ 月次試算表オプションの有無と費用
- □ 繁忙期の柔軟対応(仕訳数超過時の単価)
- □ 同業種の対応実績
- □ 契約解除・データ引渡し条件が明文化
7項目以上クリアする会社を3社比較するのがおすすめです。
記帳代行を依頼するときに準備する書類
① 現金出納帳・小口現金の記録
② 通帳コピー or 銀行明細CSV
③ カード利用明細
④ 領収書・レシート(画像 or PDF)
⑤ 請求書(受領分・発行分)
⑥ 給与支払明細
⑦ 前期の総勘定元帳(過去仕訳の勘定科目整合のため)
クラウド会計を既に使っていれば、銀行・カード連携で自動取り込みされるため、実質①④⑤⑥のみ用意すればOKになります。
記帳代行サービス利用の流れ
標準スケジュール
- Week 1:業務範囲・仕訳数・料金確認、契約・NDA締結
- Week 2:会計ソフト連携、勘定科目マスタ整備、書類共有ルール決定
- Week 3:試験運用(先月分の仕訳)、齟齬ポイント洗い出し
- Week 4〜:本運用開始
種火が大切にする「記帳代行の原則」
初月に勘定科目を徹底的に整え、決算時に税理士の手戻りが出ない状態を作ります。
② 経営者が”数字の在処”を知っている状態
仕訳だけでなく、月次試算表のどこを見ればよいかの30分レクチャーを含めます。
③ 事業成長に合わせて経理代行・社外CFOへスムーズ移行
記帳代行では物足りなくなったとき、同じチームで経理代行・[社外CFO](/gaibu-cfo-complete-guide/)まで一貫支援できます。
記帳代行の今後の展望
AI-OCR・クラウド会計の自動仕訳が進化し、「人間の仕訳入力」は減る方向です。ただし、
– AIの誤分類を人間がレビュー
– 勘定科目の判断が必要な複雑仕訳
– 税制改正への追従
これらは依然として人間の仕事。今後の記帳代行は「AIが仕訳を下書き→人間がレビュー」のハイブリッドモデルが主流になる見込みです。
よくある質問
Q. 記帳代行と経理代行、どちらを選ぶべき?
A. 月次試算表が必要か否かで決まります。仕訳入力だけ外出ししたい=記帳代行、月次レベルで経営数字を見たい=経理代行。詳しくは経理代行サービス完全ガイドを参照。
Q. 1仕訳あたり単価の相場は?
A. 50〜100円が中央値です。44円など最安値もありますが、精度やレスポンスで差が出ます。年間数万円の差なら、精度を優先すべきです。
Q. 個人事業主でも依頼できる?
A. できます。月5,000円〜で受け付ける業者も多く、確定申告の準備時期だけスポット依頼するケースも一般的です。
Q. クラウド会計を使っていなくても依頼できる?
A. 可能ですが、コストが大幅に上がります(紙領収書のスキャン・分類代行が加算)。記帳代行依頼と同時にクラウド会計導入するのが最も効率的です。経理ソフトの選び方も参考に。
Q. 税理士の記帳代行との違いは?
A. 税理士は「記帳+決算+税務申告」がセットで、専業の記帳代行より割高になる傾向。逆に税務の相談・申告もワンストップで頼めるのが強みです。
まとめ:記帳代行は”仕訳の時間”を月20時間取り戻す手段
記帳代行は、最も安価で最も導入が早い経理アウトソースの入り口です。月1〜5万円で仕訳業務が消え、経営者・社員が本業に時間を使えるようになります。
- まず1ヶ月の仕訳数を把握(会計ソフトの「仕訳帳」でカウント)
- 料金体系(従量/固定)で3社比較
- 質問レスポンス・NDAを必ず確認
関連記事として、経理代行サービス完全ガイド、経理の外注ガイド、経理ソフト比較、経理と会計の違い もあわせてどうぞ。
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