
経理を外注するか、社内で採用するか——中小企業の経営者が年に何度も悩む論点です。月額5〜10万円で経理を任せられるなら魅力的に見える一方、「どこまで任せられるのか」「データの安全は」「任せっきりにして大丈夫か」という不安もつきまといます。
本記事では、経理の外注で任せられる業務範囲・費用相場・社内採用との比較・会社選びの失敗例と対策を、年商1〜30億円規模の中小企業を支援してきた合同会社種火の実例ベースで整理します。
経理の外注とは?「誰に何を頼めるか」を整理
経理の外注(アウトソーシング)とは、記帳・月次決算・支払業務・給与計算などの経理業務を外部の専門会社に委託することです。代表的な委託先は3つに分類できます。
① 経理代行会社:記帳〜月次決算〜支払までフルパッケージ
② 記帳代行会社:仕訳入力のみ、月額1〜3万円と安価
③ 税理士事務所の記帳代行:決算とセットで割安になるケースあり
本記事では、主に①の経理代行会社を想定して解説します。より広い全体像は経理代行サービスの完全ガイドをご覧ください。
経理を外注するメリット・デメリット
メリット 5つ
- コスト削減:経理担当1人の人件費は年間500万円前後、外注なら100〜200万円で同等業務
- 採用リスクの解消:経理は採用難。外注なら空きポジションリスクがない
- 属人化の解消:担当者退職でも外注会社のチームがカバー
- 最新税制の自動アップデート:インボイス・電帳法など情報収集の負担がゼロに
- 経営者が本業に集中:週10時間経理に使っていた時間を営業・開発に振り向けられる
デメリットと対策 3つ
| デメリット | 対策 |
|---|---|
| 社内ノウハウが残らない | 契約に「月次レポート解説レクチャー」を含める |
| 情報漏洩リスク | NDA・Pマーク・ISMSの有無を確認 |
| コミュニケーション齟齬 | 週1の30分定例ミーティングを運用化 |
経理外注の費用相場
業務範囲別の相場表
| 業務範囲 | 月額相場 | 対象規模 |
|---|---|---|
| 記帳のみ(〜100仕訳) | 1〜3万円 | 個人事業主 |
| 記帳+月次試算表 | 3〜8万円 | 年商1〜3億円 |
| 上記+給与計算(〜20名) | 5〜12万円 | 年商3〜10億円 |
| 上記+支払代行+レポート | 12〜20万円 | 年商10億円超 |
仕訳数・従業員数での変動幅
月100仕訳以内は基本料金、100仕訳を超えると1仕訳あたり30〜100円加算が一般的。給与計算は1名あたり1,000〜2,500円で設定される会社が多いです。
経理外注 vs 社内採用:コスト徹底比較

社内採用のコスト構造(年間)
- 給与(月額30万円):360万円
- 社会保険料(会社負担15%):54万円
- 採用コスト・教育コスト:50〜100万円
- 退職時コスト・引き継ぎ工数:50〜100万円
- 合計:年間500〜600万円
外注のコスト構造(年間)
- 月額8万円 × 12ヶ月:96万円
- 初期設定費:20〜30万円(初年度のみ)
- 合計:年間120〜130万円
「社員を採用すれば自社にノウハウが残るのでは?」という質問をよく受けますが、実際には”ノウハウを持った経理担当者ほど転職市場で引き抜かれる”のが現実です。外注+社内の経営者が月次レポートを読めるようになる、の組み合わせの方がリスクが低いケースが多いです。
経理外注で「失敗する」よくある3パターン
パターン1:安さだけで決めて、後から追加料金が雪だるま式に
月額1万円の激安プランを契約 → 仕訳数超過・給与計算・年末調整・決算対応で毎月追加 → 気づけば月額10万円超。契約時に”含まれる業務”と”オプション単価”を必ず明文化してください。
パターン2:代行会社が「こちらから聞かないと動かない」タイプ
質問すれば答えるが、能動的な提案がない受け身型の会社に当たると、気づけば税制改正に取り残されていた、というケース。初回面談で「最近インボイス対応で困るお客様が多いですか?」と聞き、能動的に問題提起してくるかを判断材料にしましょう。
パターン3:顧問税理士との連携ミスで決算が大混乱
経理外注と税理士が別会社で、データ形式が合わず決算前に大混乱——よくある失敗です。契約前に顧問税理士名を伝え、連携実績を確認してください。
失敗しない経理外注会社の選び方【10のポイント】
- □ 月次決算(月次試算表)が標準パッケージに含まれるか
- □ freee・マネーフォワード・弥生のいずれかに対応しているか
- □ 担当者1人ではなく、チーム体制で回す運用か
- □ 質問への回答SLAが明示されているか(例:24時間以内)
- □ 顧問税理士との連携実績があるか
- □ NDA・Pマーク・ISMSの取得状況
- □ 同業種・同規模の支援実績があるか
- □ レポートの提出フォーマットを経営会議で使えるか
- □ 事業拡大時のスコープ拡張に柔軟か
- □ 解約条件・データ引渡しが明文化されているか
8項目以上クリアできる会社を3〜5社に絞って比較するのがおすすめです。
経理外注の導入プロセス
標準的なスケジュール
- Week 1: 現状棚卸し・業務範囲確定
- Week 2-3: 複数社見積もり取得・面談
- Week 4: 契約・NDA締結
- Month 2: 会計ソフト設定・過去データ移行・試験運用
- Month 3: 正式運用開始
種火の経理外注支援で大切にしていること
月次試算表の納品だけでは意味がありません。翌月の打ち手が見える論点整理まで。
② 社内に最低限のリテラシーを残す
3ヶ月に一度、30分の経理ミニ勉強会を開催し、経営者・幹部が数字を読めるようにします。
③ 成長に応じてスコープを広げる
年商3億円の経理と30億円の経理はまったく別物。成長フェーズに応じて体制を柔軟に拡張します。
よくある質問
Q. 経理外注とクラウド会計、どちらを先に入れるべき?
A. クラウド会計が先です。外注会社も基本的にクラウド会計前提で動くため、まず会計ソフトを決めてから外注を検討する順序が効率的です。経理ソフトの選び方も参考にしてください。
Q. 月末月初に急に忙しくなる時だけ外注できますか?
A. 可能です。スポット契約(月10万円〜)や繁忙期だけの3ヶ月契約を受ける会社もあります。
Q. 外注先が倒産したら業務が止まりませんか?
A. そのリスクはあります。契約時に「データの月次バックアップ」「解約時データ引渡し」を明文化し、クラウド会計のデータは自社で常に閲覧できる体制にしておくのが鉄則です。
Q. 経理担当者がいるのに外注する意味はありますか?
A. あります。既存担当者は”経営に近い分析業務”へシフトし、定型業務を外注に出す役割分担が中小企業では最も生産性が高い組み合わせです。
まとめ:経理外注は「何をどこまで任せるか」で成否が決まる
経理を外注するかどうかの判断は、コストだけでなく自社の成長フェーズ・経営者の時間価値・リスク許容度で決めるべきです。
- まずは自社の経理業務を棚卸し(何に・誰が・何時間使っているか)
- 次に外注できる部分と社内で残す部分を分ける
- 最後に3〜5社を同一条件で比較
関連記事として、経理代行サービス完全ガイド(Pillar)、経理ソフトの選び方、経理と会計の違い もご覧ください。
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