経理を外注することで経営者が本業に集中できる様子

経理を外注するか、社内で採用するか——中小企業の経営者が年に何度も悩む論点です。月額5〜10万円で経理を任せられるなら魅力的に見える一方、「どこまで任せられるのか」「データの安全は」「任せっきりにして大丈夫か」という不安もつきまといます。

本記事では、経理の外注で任せられる業務範囲・費用相場・社内採用との比較・会社選びの失敗例と対策を、税理士事務所での実務を含め、これまで30社以上の中小企業を支援してきた合同会社種火の実務の視点で整理します。

経理の外注とは?「誰に何を頼めるか」を整理

経理の外注(アウトソーシング)とは、記帳・月次決算・支払業務・給与計算などの経理業務を外部の専門会社に委託することです。代表的な委託先は3つに分類できます。

経理の外注先 3種類
① 経理代行会社:記帳〜月次決算〜支払までフルパッケージ
② 記帳代行会社:仕訳入力のみ、月額1〜3万円と安価
③ 税理士事務所の記帳代行:決算とセットで割安になるケースあり

本記事では、主に①の経理代行会社を想定して解説します。より広い全体像は経理代行サービスの完全ガイドをご覧ください。

請求書の発行や支払処理など、日々の経理事務だけを任せたい場合は経理事務代行とはも参考になります。

経理を外注するメリット・デメリット

メリット 5つ

  1. コスト削減:経理担当1人の人件費は年間500万円前後、外注なら100〜200万円で同等業務
  2. 採用リスクの解消:経理は採用難。外注なら空きポジションリスクがない
  3. 属人化の解消:担当者退職でも外注会社のチームがカバー
  4. 最新税制の自動アップデート:インボイス・電帳法など情報収集の負担がゼロに
  5. 経営者が本業に集中:週10時間経理に使っていた時間を営業・開発に振り向けられる

デメリットと対策 3つ

デメリット 対策
社内ノウハウが残らない 契約に「月次レポート解説レクチャー」を含める
情報漏洩リスク NDA・Pマーク・ISMSの有無を確認
コミュニケーション齟齬 週1の30分定例ミーティングを運用化

経理外注の費用相場

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目安は月額5〜8万円前後。ただし給与計算・請求書発行・支払代行まで含めると10〜15万円、月次で経営レポートまで作ると15〜20万円が相場です。

業務範囲別の相場表

業務範囲 月額相場 対象規模
記帳のみ(〜100仕訳) 1〜3万円 個人事業主
記帳+月次試算表 3〜8万円 年商1〜3億円
上記+給与計算(〜20名) 5〜12万円 年商3〜10億円
上記+支払代行+レポート 12〜20万円 年商10億円超

仕訳数・従業員数での変動幅

月100仕訳以内は基本料金、100仕訳を超えると1仕訳あたり30〜100円加算が一般的。給与計算は1名あたり1,000〜2,500円で設定される会社が多いです。

経理外注 vs 社内採用:コスト徹底比較

経理外注と社内採用のコスト比較グラフ

社内採用のコスト構造(年間)

  • 給与(月額30万円):360万円
  • 社会保険料(会社負担15%):54万円
  • 採用コスト・教育コスト:50〜100万円
  • 退職時コスト・引き継ぎ工数:50〜100万円
  • 合計:年間500〜600万円

外注のコスト構造(年間)

  • 月額8万円 × 12ヶ月:96万円
  • 初期設定費:20〜30万円(初年度のみ)
  • 合計:年間120〜130万円
代表 早見 文博より
「社員を採用すれば自社にノウハウが残るのでは?」という質問をよく受けますが、実際には”ノウハウを持った経理担当者ほど転職市場で引き抜かれる”のが現実です。外注+社内の経営者が月次レポートを読めるようになる、の組み合わせの方がリスクが低いケースが多いです。

経理代行の相場を依頼先ごとに比較する

「経理の外注」と検索して出てくるサービスは、提供者によって料金体系がまったく違います。同じ業務でも依頼先を変えるだけで倍近く変わることがあるため、相場は依頼先ごとに把握してください。

依頼先 月額の相場 料金の決まり方 向いている状況
記帳代行専門会社 5,000円〜3万円 仕訳1件あたり50〜100円の従量制が主流 仕訳入力だけを切り出したい
経理代行会社 3万〜10万円 業務範囲と件数による定額制 記帳+請求・支払も任せたい
税理士・税理士法人 顧問料に含む、または月1〜5万円 顧問契約に付随。記帳のみは割高 決算・申告まで一貫させたい
オンラインアシスタント 時間単価2,500〜4,000円 稼働時間の従量制 業務量が月によって変動する
派遣・スポット人材 時間単価2,000〜3,500円 稼働時間×実働 繁忙期だけ人手が欲しい

比較するときに注意すべきは、従量制と定額制では損益分岐が異なる点です。仕訳が月50件なら従量制のほうが安く、200件を超えると定額制が有利になることが多くなります。

また、時間単価で契約する場合は作業時間の見積もりが甘いと総額が膨らみます。「月10時間で足りる」という前提が実際は20時間だった、というずれは頻繁に起こります。初月は実績を計測し、2か月目に契約時間を見直すことを前提に組んでください。

相見積もりを比較する手順

3社程度から見積もりを取るのが一般的ですが、条件をそろえずに並べても判断できません。次の順で進めてください。

1. 自社の業務量を数える

見積もり依頼の前に、直近3か月の実数を出します。

数える対象 調べ方
月間の仕訳件数 会計ソフトの仕訳帳の行数、または通帳明細+領収書+請求書の枚数
請求書の発行件数 売上先の数×月あたりの発行回数
支払件数 買掛先の数、振込件数
従業員数 給与計算を含める場合に必要

「だいたい100件くらい」という伝え方だと、実際が200件だった場合に契約後の増額交渉になります。数えてから依頼することで、見積もりの精度が上がります。

2. 依頼したい範囲を1枚にまとめる

「記帳」「請求書発行」「支払処理」「経費精算チェック」「月次資料の作成」のうち、どこまでを外に出すのかを明記します。この1枚を各社に同じ形で渡せば、条件のそろった見積もりが返ってきます。

請求書の作成だけを任せる場合の料金の目安は、請求書作成代行の料金相場で紹介しています。

3. 比較表で並べる

総額だけでなく、次の項目を横並びにしてください。

比較項目 確認する内容
基本料金と従量部分 件数が増えたときの単価。上限があるか
含まれない作業 追加費用が発生する条件を具体的に
対応する会計ソフト いま使っているものに対応しているか
締め切りと納期 いつまでに資料を渡せば、いつ試算表が出るか
担当体制 専任か、チーム対応か。引き継ぎの記録方法
情報管理 データの受け渡し方法、契約終了後の取り扱い

「含まれない作業」の欄が最も差が出ます。 安い見積もりは範囲が狭いだけ、という場合が多いためです。

外注できない業務を先に確認する

経理の周辺には、資格がなければ行えない業務があります。ここを知らずに「まるごと外注」を期待すると、契約後に手戻りが発生します。

業務 経理代行会社に依頼できるか
記帳・仕訳入力、試算表の作成 できる
請求書の発行、入金確認、支払データの作成 できる(振込の実行は会社側)
給与計算、明細の作成 できる
決算書の作成、税務申告 できない(税理士の独占業務)
税務相談への回答、節税の判断 できない(税理士の独占業務)
社会保険・労働保険の手続き できない(社会保険労務士の独占業務)
年末調整の税務書類の作成・提出 できない(税理士の独占業務)

「この支出は経費になりますか」という質問は税務判断にあたるため、経理代行会社は答えられません。顧問税理士がいない状態で経理だけを外注すると、判断が必要な取引が出るたびに止まります。

種火では、有資格者の業務にあたる部分は提携先へお取次ぎします。契約は顧客と有資格者が直接結ぶ形です。年末調整の範囲については年末調整の代行・アウトソーシングで詳しく整理しています。

外注に切り替える時期の選び方

同じ内容でも、始める時期によって費用と手間が変わります。

期首から始めるのが最も安い。 期中から始めると、それ以前の分を遡って処理する作業が発生し、初期費用が上がります。決算月の翌月から開始できるよう、2〜3か月前に動き始めてください。

決算直前の切り替えは避ける。 引き継ぎと決算対応が重なり、双方の負担が大きくなります。ミスも起きやすい時期です。

担当者の退職が決まってからでは遅い。 退職までに引き継ぎを終える必要がありますが、経理代行の立ち上がりには1〜2か月かかります。退職の申し出があった時点で並行して動くのが現実的です。

経理外注で「失敗する」よくある3パターン

パターン1:安さだけで決めて、後から追加料金が雪だるま式に

月額1万円の激安プランを契約 → 仕訳数超過・給与計算・年末調整・決算対応で毎月追加 → 気づけば月額10万円超。契約時に”含まれる業務”と”オプション単価”を必ず明文化してください。

パターン2:代行会社が「こちらから聞かないと動かない」タイプ

質問すれば答えるが、能動的な提案がない受け身型の会社に当たると、気づけば税制改正に取り残されていた、というケース。初回面談で「最近インボイス対応で困るお客様が多いですか?」と聞き、能動的に問題提起してくるかを判断材料にしましょう。

パターン3:顧問税理士との連携ミスで決算が大混乱

経理外注と税理士が別会社で、データ形式が合わず決算前に大混乱——よくある失敗です。契約前に顧問税理士名を伝え、連携実績を確認してください。

失敗しない経理外注会社の選び方【10のポイント】

  1. □ 月次決算(月次試算表)が標準パッケージに含まれるか
  2. □ freee・マネーフォワード・弥生のいずれかに対応しているか
  3. □ 担当者1人ではなく、チーム体制で回す運用か
  4. □ 質問への回答SLAが明示されているか(例:24時間以内)
  5. □ 顧問税理士との連携実績があるか
  6. □ NDA・Pマーク・ISMSの取得状況
  7. □ 同業種・同規模の支援実績があるか
  8. □ レポートの提出フォーマットを経営会議で使えるか
  9. □ 事業拡大時のスコープ拡張に柔軟か
  10. □ 解約条件・データ引渡しが明文化されているか

8項目以上クリアできる会社を3〜5社に絞って比較するのがおすすめです。

経理外注の導入プロセス

経営者:来月から外注したいのですが、すぐ始められますか?
種火:最短で可能ですが、会計ソフト設定と勘定科目整備に2〜4週間は見ておくと安心です。決算月の3ヶ月前までに導入判断するのがベストタイミングです。

標準的なスケジュール

  1. Week 1: 現状棚卸し・業務範囲確定
  2. Week 2-3: 複数社見積もり取得・面談
  3. Week 4: 契約・NDA締結
  4. Month 2: 会計ソフト設定・過去データ移行・試験運用
  5. Month 3: 正式運用開始

種火の経理外注支援で大切にしていること

① 経営者が”数字を使える”状態を作る
月次試算表の納品だけでは意味がありません。翌月の打ち手が見える論点整理まで。

② 社内に最低限のリテラシーを残す
3ヶ月に一度、30分の経理ミニ勉強会を開催し、経営者・幹部が数字を読めるようにします。

③ 成長に応じてスコープを広げる
年商3億円の経理と30億円の経理はまったく別物。成長フェーズに応じて体制を柔軟に拡張します。

依頼先ごとの料金表は経理代行の料金表、選び方の詳細は経理代行の選び方にまとめています。

経理の作業をまとめて任せたい場合は、種火の経理代行・記帳代行サービスで対応しています。

よくある質問

Q. 経理外注とクラウド会計、どちらを先に入れるべき?

A. クラウド会計が先です。外注会社も基本的にクラウド会計前提で動くため、まず会計ソフトを決めてから外注を検討する順序が効率的です。経理ソフトの選び方も参考にしてください。

Q. 月末月初に急に忙しくなる時だけ外注できますか?

A. 可能です。スポット契約(月10万円〜)や繁忙期だけの3ヶ月契約を受ける会社もあります。

Q. 外注先が倒産したら業務が止まりませんか?

A. そのリスクはあります。契約時に「データの月次バックアップ」「解約時データ引渡し」を明文化し、クラウド会計のデータは自社で常に閲覧できる体制にしておくのが鉄則です。

Q. 経理担当者がいるのに外注する意味はありますか?

A. あります。既存担当者は”経営に近い分析業務”へシフトし、定型業務を外注に出す役割分担が中小企業では最も生産性が高い組み合わせです。

まとめ:経理外注は「何をどこまで任せるか」で成否が決まる

経理を外注するかどうかの判断は、コストだけでなく自社の成長フェーズ・経営者の時間価値・リスク許容度で決めるべきです。

  • まずは自社の経理業務を棚卸し(何に・誰が・何時間使っているか)
  • 次に外注できる部分と社内で残す部分を分ける
  • 最後に3〜5社を同一条件で比較

関連記事として、経理代行サービス完全ガイド(Pillar)、経理ソフトの選び方、経理と会計の違い もご覧ください。

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