社長が営業から戻ってきて、夜に請求書を作り、週末に領収書を整理する。中小企業では珍しくない光景です。

管理部門の仕事は、売上を生まないのに止められません。しかも「経理だけ」「労務だけ」で人を雇えるほどの量はなく、かといって社長や現場が片手間でやると必ず滞ります。この中途半端さこそが、中小企業のバックオフィスが抱える構造的な問題です。

この記事では、バックオフィス支援で何をどこまで任せられるのか、どんな支援形態があるのかを整理します。

任せたあとも社内に残る仕事については、バックオフィスは丸投げできる?で詳しく扱っています。

バックオフィス支援の対象業務

バックオフィスとは、直接売上を生まないが事業の運営に不可欠な管理部門を指します。対象は主に4領域です。

領域 主な業務
経理・財務 記帳、請求書発行、入金消込、支払処理、月次試算表、資金繰り管理
労務・人事 給与計算、勤怠管理、入退社手続き、社会保険関連の資料作成
総務 契約書管理、備品管理、各種申請、問い合わせ対応
情報システム 業務システムの導入・運用、アカウント管理

バックオフィス支援とは、これらを外部の専門家に部分的または包括的に委託することです。1領域だけを切り出すこともできますし、まとめて任せることもできます。

4つの支援形態と、その違い

「バックオフィス支援」と呼ばれるサービスには、性質の違う4つの型があります。

① 代行型(アウトソーシング)

業務そのものを外部が実行します。経理代行会社やBPO会社が該当します。

経理の事務作業を任せる場合の範囲と費用は、経理事務代行とはで解説しています。

  • 効果:担当者の作業がなくなり、属人化が解消される
  • 費用:月額固定+従量が中心
  • 向いている会社:人を採用せずに管理部門を回したい

② SaaS型(ツール導入)

クラウドツールを導入して、作業そのものを効率化します。

  • 効果:作業時間が短縮される
  • 費用:月額数千円〜数万円と安い
  • 注意点:操作する人は社内に必要。属人化は解消されない

③ コンサル型(設計支援)

業務フローの設計、ツール選定、体制構築を支援します。実行は自社で行います。

  • 効果:仕組みが残る
  • 費用:プロジェクト単位、または月額顧問
  • 向いている会社:将来的に内製で回したい

④ 常駐・派遣型

人材が自社に来て業務を行います。

  • 効果:社内の事情に合わせた柔軟な対応が可能
  • 費用:最も高い
  • 注意点:その人が辞めれば元に戻る

選び方の目安

悩み 向いている形態
担当者が1人しかおらず不在時に止まる ① 代行型
担当者はいるが作業に時間がかかりすぎる ② SaaS型
何から手をつけるべきか分からない ③ コンサル型
一時的に業務量が急増している ④ 常駐・派遣型

最も多い誤りは、①が必要な会社が②を選ぶことです。 ツールを入れても操作する人は必要なので、担当者不在のリスクは残ったままになります。

費用の目安

支援形態 費用の目安
代行型(経理のみ) 月2万〜10万円
代行型(経理+労務+総務) 月10万〜30万円
SaaS型 月5,000〜50,000円
コンサル型 月5万〜30万円
常駐・派遣型 月25万〜50万円

比較の基準は「人を1人採用した場合」です。管理部門の担当者を1名雇うと、給与のほかに社会保険料の会社負担、採用費、教育コストがかかり、年収300万円の人でも実質400万円前後の負担になります。

代行型で月15万円なら年間180万円。採用の半分以下で、複数領域をカバーできるという計算になります。加えて、退職リスクと採用の手間がありません。

依頼先を選ぶときの4つのポイント

① 領域をまたいで任せられるか

経理と労務で窓口が分かれると、給与データの受け渡しなど、社内での調整作業が残ります。まとめて任せられる先のほうが、実際の負担は小さくなります。

② 資格の境界を明示しているか

バックオフィス業務には、資格者しか行えない領域があります。

  • 税理士の独占業務:税務代理、税務書類の作成、税務相談
  • 社会保険労務士の独占業務:労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行

「全部できます」と言う無資格の業者は避けてください。正しい答えは「計算と資料作成までを当社が担い、提出は提携する有資格者が行います」という、境界を明示したものです。

③ 数字が返ってくるか

作業を代行するだけの契約か、月次試算表や資金繰りの状況まで報告があるか。後者でなければ、経営判断の材料は増えません。

④ データを自社で持てるか

会計データや勤怠データが委託先のシステムにしかない状態は避けてください。契約終了時に自社形式で受け取れるかを確認します。

依頼先の選定基準は経理代行の選び方|失敗しない7つのチェックポイントでも詳しく解説しています。

導入で失敗する典型パターン

パターン1:ツールを入れて終わりにする

会計ソフトや勤怠システムを導入すれば解決すると考えるケースです。ツールは作業を速くしますが、操作して判断する人は依然として必要です。担当者が辞めれば、高機能なツールだけが残ります。

パターン2:業務を切り出さずに丸ごと投げる

「全部お願いします」という依頼は、実は最も失敗しやすい形です。自社の業務ルールが文書化されていない状態で丸投げすると、委託先が判断できず、質問が大量に返ってきます。結果として社内の対応時間がかえって増えます。

まず1領域を切り出し、そこで運用の型をつくるのが確実です。

パターン3:安さだけで選ぶ

単価が安い委託先は1人あたりの担当件数が多く、質問への回答が遅くなりがちです。月次の締めで判断待ちが3日続くと、試算表が出るのは月半ば。経営判断には使えません。

よくある質問

Q. 何から外に出すべきですか?

記帳から始めるのが定石です。毎月必ず発生し、判断の余地が少なく、外に出したときの効果が測りやすいためです。運用が回ることを確認してから、請求・支払・給与へ広げます。

Q. 社員が「仕事を取られる」と感じませんか?

管理部門の担当者が抱えているのは、多くの場合「本当はやりたくないが誰もやらない作業」です。定型作業を外に出し、社内には確認と判断を残す形にすると、むしろ負担が減ったと受け止められることがほとんどです。

Q. 小規模でも依頼できますか?

依頼できます。従業員数名の会社でも、記帳と請求だけなら月2万〜4万円程度から始められます。むしろ人を雇えない規模の会社ほど、外部委託の効果が大きくなります。

まとめ

  • バックオフィス支援の対象は経理・財務/労務・人事/総務/情報システムの4領域
  • 支援形態には代行型・SaaS型・コンサル型・常駐型があり、解決できる問題が違う
  • 担当者不在のリスクを消したいなら代行型。ツール導入では属人化は解消されない
  • 代行型で月15万円なら、管理部門を1名採用する費用の半分以下
  • 税理士・社労士の独占業務の境界を明示する会社を選ぶ
  • 最初に外に出すのは記帳が定石

種火では、記帳・請求・支払に加え、オプションで給与計算までを一つの窓口で承っています。税務申告や社会保険の届出が必要な場面では提携する税理士・社労士と連携し、どこまでを当社が担うかを明示したうえでご提案します。

社会保険・労働保険の書類の作成や提出の代行を仕事として行えるのは、社会保険労務士に限られます(e-Gov法令検索「社会保険労務士法」 第2条・第27条)。

「何から手をつければいいか分からない」という段階からご相談いただけます。まず現状の業務を棚卸しし、外に出すべき部分と社内に残すべき部分を仕分けるところからお手伝いします。

あわせて読みたい:経理アウトソーシングとは?メリット・費用相場・失敗しない選び方