「経理ソフトはfreeeが良いと聞くけれど、弥生の方が安いらしい」「マネーフォワードと弥生の違いが結局わからない」——中小企業の経営者からよく聞く悩みです。ネット上の比較記事には、紹介料を目的に特定のソフトを勧めるものも多く、本当に知りたい情報にたどり着きにくいのが実情です。
本記事では、税理士事務所での実務を含め、これまで30社以上の中小企業の経理を支援してきた経理代行会社の立場から、主要な経理ソフト(会計ソフト)を比較します。料金は2026年9月時点で各社の公式サイトを確認した内容です。誰にどのソフトが向くのか、選ぶ前に押さえるべき軸、比較のポイント、導入でつまずきやすい点まで整理します。
経理ソフトとは?会計ソフトとの違い
経理ソフトとは、仕訳の入力・帳簿や決算書の作成・請求書の発行・経費精算など、日々の経理業務を支援するソフトウェアの総称です。「会計ソフト」「クラウド会計」とほぼ同じ意味で使われ、検索でも両方の呼び方が混在しています。経理の現場全体の効率化の手順は、経理業務を効率化する方法で紹介しています。
経理ソフトでできること(主な機能)
- 銀行口座・クレジットカードの明細の自動取り込みと、仕訳の自動提案
- 仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿と、試算表・決算書の作成
- 請求書の作成・発行(インボイス制度の記載要件に対応)
- 経費精算(スマホで撮影した領収書からの申請)
- 電子帳簿保存法に沿った証憑(領収書・請求書)のデータ保存
- 月次の損益や資金の推移を見るレポート
どこまでを1つのソフトでまかなえるかは製品とプランによって違います。会計だけのソフトもあれば、請求・経費精算・給与までをまとめて提供するシリーズもあります。
クラウド型とインストール型の違い
| クラウド型 | インストール型 | |
|---|---|---|
| 使う場所 | ブラウザやスマホからどこでも | ソフトを入れたパソコンのみ |
| 料金 | 月額・年額の利用料 | 購入費用+保守(サポート)費用が中心 |
| 法改正への対応 | 自動で更新される | 更新版の適用が必要 |
| 銀行・カード連携 | 明細を自動で取り込める | 製品によっては取り込みが限定的 |
| 税理士・代行会社との共有 | 同じデータを同時に見られる | データの受け渡しが必要 |
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が続いたこともあり、新しく導入する中小企業ではクラウド型を選ぶケースが多くなっています。一方で、インターネット環境に左右されたくない、長年の運用を変えたくないという会社では、インストール型を使い続ける選択も合理的です。
経理ソフトを選ぶ前に押さえる「3つの軸」
軸1:会社の規模と仕訳の数
- 個人事業主〜従業員10名:freee会計・マネーフォワード クラウド会計・弥生会計 Next
- 従業員10〜50名:マネーフォワード クラウド会計・勘定奉行クラウド
- 従業員50名超:勘定奉行クラウド・PCAクラウド・ERP(統合型の基幹システム)
軸2:税理士・経理代行との連携
顧問の税理士や経理代行会社が扱い慣れたソフトを使うと、データの受け渡しの手間や追加料金、運用のミスが減ります。契約する先に「得意なソフトはどれですか」と聞いてから選ぶのが、実は最も失敗の少ない方法です。
軸3:社内で誰が入力するか
- 社長が自分で入力する:freee会計(簿記の用語を知らなくても進めやすい画面)
- 経理担当者が入力する:マネーフォワード クラウド会計・弥生会計 Next(従来の複式簿記に近い操作)
- 代行会社にまとめて任せる:代行会社の得意なソフトに合わせる
主要7製品の比較【2026年版】
比較表
| 製品 | 料金の目安(法人・2026年9月確認) | 得意なこと | 向く会社 |
|---|---|---|---|
| freee会計 | 公式サイトの料金表で確認(無料で試せる) | 簿記に詳しくなくても使える画面 | 創業〜10名、社長が自分で入力 |
| マネーフォワード クラウド会計 | 年払いで月2,480円相当〜(月払いは3,980円〜) | 請求・経費・給与など他サービスとの連携 | 10〜50名、バックオフィス全体を整えたい |
| 弥生会計 Next | 年34,800円(月2,900円相当)+税〜 | 従来型に近い操作と、請求・証憑管理の一体化 | 5〜30名、税理士と連携して使う |
| 勘定奉行クラウド | 月額7,750円〜(別途初期費用) | 部門別管理など中堅企業向けの標準機能 | 30〜100名、経理担当がいる |
| PCAクラウド 会計 | 公式サイトで確認 | 部門別・プロジェクト別の管理 | 製造業・建設業など管理項目が多い会社 |
| TKCのFXシリーズ | TKC会員の税理士事務所を通じて利用 | 税理士事務所との密な連携 | TKC会員の税理士と契約している会社 |
| 弥生会計(デスクトップ版) | 公式サイトで確認 | インストール型・オフラインで使える | ネット環境に左右されたくない会社 |
料金はプランの改定やキャンペーンで変わることが多く、税込・税抜の表示も各社で異なります。申し込む前に、必ず各社の公式サイトで最新の料金を確認してください。
freee会計:簿記に詳しくなくても使いやすい
経理が初めての創業者が自分で使い始めるなら、freee会計が第一候補です。「銀行口座を連携する→取引が自動で取り込まれる→内容を確認して登録する」という流れが分かりやすく、簿記の知識がなくても運用を始めやすいのが特徴です。公式サイトでは、導入事業所数を71万(2026年3月末時点・個人事業主を含む)と公表しています。
注意点は、画面の考え方が一般的な会計ソフトと少し違うことです。経理経験者や、他のソフトに慣れた税理士が戸惑うことがあるため、顧問税理士が対応しているかを事前に確認しましょう。詳しくはfreee会計の公式サイトで確認できます。
マネーフォワード クラウド会計:他サービスとの連携に強い
会計・請求書・経費精算・給与・勤怠を同じシリーズでそろえられるのが強みです。従業員が10名を超え、バックオフィス全体をまとめて整えたい会社に向いています。法人向けには、経営者1名の「ひとり法人プラン」から、利用者4名以上の「ビジネスプラン」まで段階的なプランがあります。
freeeに比べると、従来の会計ソフトに近い操作で、経理経験者には扱いやすいという声が多い製品です。料金はマネーフォワード クラウド会計の料金ページで確認できます。
弥生会計 Next:弥生の新しいクラウド会計
弥生は長年、中小企業や会計事務所で使われてきた会計ソフトです。これまでのクラウド版「弥生会計 オンライン」は新規申し込みが終了し、現在は後継の「弥生会計 Next」が提供されています。会計に加えて請求書の発行や取引書類の管理をまとめて行え、プランによって経費精算も使えます。
これから弥生を選ぶ場合は「弥生会計 Next」が対象になります。古い比較記事には「弥生会計 オンライン」の料金が載ったままのものもあるので注意してください。料金は弥生会計 Nextの料金プランで確認できます。
勘定奉行クラウド:中堅企業の定番
従業員30〜100名、経理担当者が複数いる会社でよく使われます。部門別の会計や、仕訳の承認の流れ、内部統制に必要な機能が標準で備わっています。freeeやマネーフォワードで始めた会社が、規模の拡大に合わせて移るケースもあります。料金体系は勘定奉行クラウドの料金ページで確認できます。
PCAクラウド 会計:管理項目の多い会社に
部門別・プロジェクト別の管理に強く、製造業や建設業など、原価や案件ごとの数字を細かく見たい会社に向いています。販売管理や給与など、同じメーカーの基幹業務ソフトと組み合わせる使い方が一般的です。詳しくはPCAの公式サイトをご覧ください。
TKCのFXシリーズ:TKC会員の税理士と使う
TKC全国会に加盟する税理士事務所が、顧問先に提供する会計システムです。税理士事務所による月次の巡回監査と組み合わせて使う前提のため、自社だけで選んで導入するものではありません。顧問税理士がTKC会員であれば、まず相談してみましょう(TKCグループの公式サイト)。
弥生会計(デスクトップ版):インストール型を使いたい会社に
パソコンにインストールして使うタイプです。インターネット環境に左右されず、慣れた操作を続けられるのが利点です。一方で、複数の拠点や在宅で同時に作業する、税理士と同じデータをリアルタイムで共有する、といった使い方にはクラウド型の方が向いています。
経理ソフトを比較するときの5つのポイント
料金は「総額」で比べる
月額の最低料金だけでなく、ユーザーを追加したときの料金、初期費用、年払いと月払いの差、必要な機能が上位プランにしかないか、までを含めて比べます。
操作性は無料体験で確かめる
多くの製品に無料の体験期間があります。実際に入力する人が、自社の取引を何件か入れてみて、迷わず使えるかを確かめるのが確実です。
銀行・カード・周辺サービスとの連携
取引のある銀行やクレジットカードに対応しているか、請求書発行・経費精算・給与計算のサービスとつながるかを確認します。連携が多いほど、手入力が減ります。
サポートの内容
チャットだけか、電話でも相談できるか、仕訳の相談ができるかは、プランによって違います。社内に経理の経験者がいない場合は、サポートの厚いプランを選ぶと安心です。
法令対応とセキュリティ
インボイス制度と電子帳簿保存法に対応しているか、データのバックアップや通信の暗号化などのセキュリティ体制が公開されているかを確認します。法令への対応の考え方はインボイス制度をわかりやすく解説、領収書のペーパーレス化も参考にしてください。
経理ソフトを導入するメリットとデメリット
メリット
- 銀行・カード明細の取り込みで、手入力と転記のミスが減る
- 帳簿や決算書が自動で作られ、月次の数字を早く確認できる
- インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正に、ソフト側の更新で対応できる
- 税理士や経理代行会社と同じデータを共有でき、やり取りが減る
デメリット
- 毎月・毎年の利用料がかかり続ける
- 最初の設定(勘定科目・連携・ルールづくり)に手間がかかる
- 操作に慣れるまで時間がかかり、使う人が限られると属人化しやすい
- サービスの障害やインターネット環境の影響を受けることがある
デメリットの多くは、導入時の設定と運用ルールで小さくできます。次の失敗パターンもあわせて確認してください。
「経理ソフトを入れたのに使いこなせない」失敗パターン
経理支援の現場で見てきた”ソフト導入の失敗”の共通パターンを3つ紹介します。どれもソフトの問題ではなく、導入時の「運用設計」の甘さが原因です。
パターン1:勘定科目を初期設定のまま使っている
初期設定の勘定科目は、どの会社でも使える汎用的なものです。自社の実態に合わない科目のまま使うと、月次の試算表が経営判断に使えない内容になります。導入した最初の月に、勘定科目を自社に合わせて整えるだけで、レポートの質が大きく変わります。
パターン2:銀行・カードの連携を設定したまま放置している
連携を設定しても、過去の取引は自動で取り込まれない場合があります。導入前の期間の明細を取り込まないと、正しい試算表になりません。取り込んだ明細を定期的に確認し、登録する習慣も必要です。
パターン3:領収書や請求書を集めるルールがない
社長が持っている領収書、メールで届く請求書、紙の請求書——どこに集めるかが決まっていないと、月末に書類を探す作業が始まります。共有フォルダやチャットの専用の場所を決め、「受け取ったらすぐ入れる」ルールをつくりましょう。
種火が勧める「経理ソフト選びの3原則」
主要な製品の機能は似ています。毎日使う人がストレスなく操作できるかを優先してください。
② 税理士・代行会社の得意なソフトに合わせる
扱い慣れたソフトを選ぶと、追加の料金や運用のミスが減ります。
③ 最低3年は同じソフトを使う前提で選ぶ
途中で変えると、データの移行や使い方の覚え直しに手間がかかります。最初の選択が、その後の業務の負担を左右します。
ソフト導入だけで解決しないときの選択肢
ソフトを入れても、仕訳を入れる人がいなければ経理は回りません。「入れたけれど放置している」状態なら、経理代行と組み合わせてソフトの運用ごと任せる方法があります。種火の場合、記帳代行は月3万円〜、経理代行は月6万円〜(いずれも税別)でお引き受けしています。料金の見方は経理代行の料金表の見方、サービス全体は経理代行サービス完全ガイド、ソフトとAIでどこまで自動化できるかは記帳代行とAIをご覧ください。
ソフトの選定から導入・定着までを一緒に進めたい場合は、種火のDX・業務効率化の支援で、経理の運用ごと任せたい場合は記帳代行・経理代行サービスで伴走しています。
よくある質問
Q. freee・マネーフォワード・弥生、結局どれが良いですか?
A. 会社の規模と、税理士・代行会社がどのソフトに対応しているかで決まります。社長が自分で入力するならfreee会計、他サービスとの連携を重視するならマネーフォワード クラウド会計、従来型の操作で税理士と連携するなら弥生会計 Next、というのが大まかな使い分けです。
Q. 無料の経理ソフトはありますか?
A. 多くの製品に無料で試せる期間はありますが、法人が継続して使うには有料プランが前提と考えておきましょう。年払いにすると月払いより安くなる製品が多くあります。
Q. ソフトを乗り換えるときのデータ移行は難しいですか?
A. 過去のデータはCSVで書き出せることが多いですが、勘定科目の体系が違うと、仕訳の組み直しが必要になるケースがあります。決算の区切りで乗り換え、税理士や代行会社に相談しながら進めるのが安全です。
Q. 個人事業主でも法人向けのソフトは使えますか?
A. 使えますが割高です。各社に個人事業主向け(確定申告用)の製品やプランがあるので、そちらを選ぶ方が費用を抑えられます。
Q. クラウド型とインストール型、どちらが安全ですか?
A. 大手のクラウド会計は、バックアップや通信の暗号化などのセキュリティ体制を公式サイトで公開しています。インストール型はパソコンの故障や紛失でデータを失うリスクがあるため、バックアップの運用が欠かせません。
まとめ:経理ソフトは「導入」より「運用設計」で決まる
主要な経理ソフトは、どれも機能的には成熟しています。差がつくのは、勘定科目の整備・連携の設定・書類を集めるルールの3点です。ここを押さえれば、どのソフトでも月次の数字を早く締められるようになります。
料金やプランは変わりやすいので、候補を2〜3製品に絞ったら、無料体験と公式サイトの最新料金で確かめてから決めましょう。関連して、経理の外注、経理と会計の違い、月次決算の早期化もあわせてご覧ください。
種火では、経理ソフトの選定から導入・運用の定着、経理代行まで、まとめてお手伝いしています。まずは30分の無料相談で、自社に合ったソフトを一緒に選びませんか。
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