創業融資は、事業を始めるときに一度きりしか使えない制度です。実績がまだない状態でお金を借りられる、めずらしい機会だからです。

ところが、この一度きりの機会でつまずく人は少なくありません。書類の書き方を知らなかった、面談で答えられなかった、そもそも申し込む先を間違えていた。理由はたいてい、制度そのものより「準備の仕方」にあります。

この記事では、創業融資のサポートで何をどこまで任せられるのか、費用はいくらか、誰に頼めばいいのかを整理します。あわせて「そもそも頼むべきか、自分でやるべきか」の判断基準もお伝えします。

創業融資のサポートとは何をしてくれるのか

創業融資のサポートとは、税理士や財務コンサルタントが、融資の申し込みから着金までを伴走する支援です。書類を代わりに書くだけの作業代行ではありません。

実務としては、次の5つが中心になります。

1. 資金計画の設計

いくら借りるべきか、を決めるところから始まります。

多くの人は「借りられるだけ借りたい」あるいは「なるべく少なく」と考えますが、どちらも危険です。多すぎれば返済が重くなり、少なすぎれば運転資金が尽きて二度目の借入が必要になります。二度目は一度目より難しくなりがちです。

支援者は、開業から黒字化までにいくら必要かを月次で積み上げ、そこから逆算して必要額を出します。自己資金とのバランス、返済期間、据置期間の使い方まで含めて設計します。

2. 創業計画書の作成支援

日本政策金融公庫の創業計画書は、A3用紙1枚です。枚数は少ないのですが、書く内容が絞られているぶん、埋め方で差がつきます。融資の審査でも見られる資金計画の組み立て方は、事業計画における資金計画の作り方で詳しく解説しています。

とくに「創業の動機」「経営者の略歴等」「取引先・取引関係等」は、審査担当者が事業の実現性を判断する材料になります。ここを「がんばります」で埋めてしまう人が多いのですが、審査で見られているのは意欲ではなく再現性です。

支援者は、あなたの経歴のどこが事業に接続するのかを引き出し、数字と結びつけて言語化します。

3. 数値計画の作成

売上予測と収支計画をつくります。ここが最も差が出る部分です。

審査で落ちる計画書の多くは、売上の根拠がありません。「初年度1,200万円」と書いてあっても、その数字がどこから来たのかが示されていない。単価×客数×稼働日という形で分解され、その各項目に根拠がある計画は、それだけで説得力が変わります。

4. 面談対策

公庫の融資では、原則として面談があります。所要時間は1時間前後です。

聞かれることはある程度決まっています。なぜこの事業を始めるのか、経験はあるか、売上の根拠は何か、自己資金はどう貯めたか、返済できなくなったらどうするか。支援者はこれらを事前に想定し、あなた自身の言葉で答えられるように詰めます。

ここで注意したいのは、支援者が答えを作って暗記させるやり方は逆効果だということです。担当者は毎日面談をしているので、借り物の言葉はすぐ分かります。

5. 金融機関との橋渡し

支援者によっては、金融機関や信用保証協会への紹介・同行を行います。

紹介があると審査が甘くなるわけではありません。ただ、その支援者が過去に紹介した案件がきちんと返済されていれば、担当者は「この人の紹介なら書類は整っているだろう」と考えます。入口の信頼が違うということです。

創業融資には主に3つのルートがある

サポートを頼む前に、そもそもどこから借りるのかを知っておく必要があります。

日本政策金融公庫の創業融資

政府系金融機関からの直接融資です。創業時にもっとも使われるルートです。

無担保・無保証で借りられる制度があり、実績のない創業者でも申し込めます。金利は民間より低めに設定されています。審査期間は申し込みから着金まで1か月前後が目安です。

制度融資(自治体+信用保証協会+金融機関)

自治体が利子や保証料の一部を補助し、信用保証協会が保証をつけ、民間の金融機関が融資する仕組みです。

3者が関わるぶん手続きに時間がかかり、着金まで2〜3か月見ておく必要があります。そのかわり、自治体によっては利子補給が手厚く、実質的な負担が公庫より軽くなることがあります。

民間金融機関のプロパー融資

銀行が保証協会を通さずに自ら貸す融資です。創業時に使えることはほとんどありません。実績が積み上がってからの選択肢と考えてください。

創業時は公庫と制度融資の併用が基本線になります。両方から借りることで、片方だけより調達額を増やせます。

創業融資サポートの費用相場

費用の形は、大きく3つに分かれます。

料金体系 相場 特徴
成功報酬型 調達額の2〜5% 通らなければ費用が発生しない。もっとも一般的
着手金+成功報酬型 着手金3〜10万円+2〜5% 着手金は結果にかかわらず発生
定額型 10〜30万円 調達額が大きいほど割安になる

1,000万円を調達した場合、成功報酬3%なら30万円です。

顧問契約とセットになっている場合

税理士事務所では、「顧問契約を結べば創業融資の支援は無料」という形をとっているところが多くあります。

一見おトクですが、月額顧問料に費用が乗っているだけの場合もあります。判断するときは、融資支援の名目だけを見ずに、その後の顧問料を含めた総額で比べてください。

無料をうたう支援について

創業融資のサポートを無料で提供している事業者もあります。多くは金融機関や保険会社、あるいは物件仲介などからの紹介料で成り立っています。

無料であること自体は問題ではありません。ただし、支援者の収益源がどこにあるかは知っておくべきです。紹介料が特定の金融機関から出ている場合、あなたにとって最適な調達先ではなく、紹介料の出る調達先を勧められる可能性があるからです。

サポートを使うと通りやすくなるのか

正直に言えば、支援者に頼めば必ず通るということはありません。 事業内容と自己資金と経歴が審査の中心にあり、それは書き方では変えられないからです。

では何が変わるのか。3つあります。

落ちる理由をつぶせる。 自己資金の出どころが説明できない、計画書の数字が合っていない、必要書類が足りない。こうした「本来なら防げた不採用」は少なくありません。支援者は事前にここを埋めます。

調達額が変わる。 希望額500万円で申し込んで満額出るケースと、根拠を整えて800万円で申し込んで満額出るケースがあります。同じ事業でも、示し方で結果が変わります。

時間が短くなる。 初めて創業計画書を書く人は、調べながらで2〜3週間かかることも珍しくありません。その時間を開業準備に回せます。

一方で、次のような場合は支援を受けても厳しいのが実情です。

  • 自己資金がほとんどない(目安として必要額の1〜3割は求められます)
  • 税金や社会保険料の滞納がある
  • 過去に返済の延滞歴がある
  • 事業経験が事業内容とまったく結びつかない

こうした状況では、まず時間をかけて条件を整えるほうが結果につながります。その判断を最初に伝えてくれる支援者かどうかが、選ぶときの重要な基準です。

サポートを受ける場合の流れ

依頼してから着金までは、おおむね次のように進みます。公庫を使う場合の一般的な例です。

1週目:現状のヒアリングと方針決定

事業内容、開業予定日、自己資金の額と貯め方、これまでの職歴を確認します。ここで調達可能額の見立てと、公庫だけでいくか制度融資を併用するかを決めます。自己資金の出どころは通帳で確認するため、過去半年から1年ぶんの通帳を用意しておくとスムーズです。

2〜3週目:計画書と数値計画の作成

創業計画書を書き、売上と収支の計画を組みます。ここは支援者が一方的に作るのではなく、往復しながら詰める作業になります。単価や客数の前提は、事業をやる本人しか答えられないからです。

4週目:申し込みと必要書類の準備

公庫へ申し込みます。あわせて、見積書、賃貸借契約書、許認可の写しなど、事業内容に応じた書類を揃えます。この段階で書類が足りないと審査が止まるため、抜けを事前に洗い出しておきます。

5〜6週目:面談と審査

面談を受けます。事前に想定問答を確認し、必要なら支援者が同行します。面談後、担当者が現地確認を行う場合もあります。

7〜8週目:結果連絡と着金

融資が決定すると契約書類が送られ、手続き後に指定口座へ入金されます。

全体で1か月半から2か月ほどです。制度融資を併用する場合は、さらに1か月前後を見込んでください。開業予定日から逆算して、余裕をもって動き始めることが結局いちばんの近道になります。

依頼先をどう選ぶか

創業融資のサポートを提供しているのは、主に税理士、財務コンサルタント、行政書士、認定支援機関です。

税理士

創業後の税務顧問とつながるため、融資後の資金繰りまで一貫して見てもらえます。ただし税理士なら誰でも融資に強いわけではありません。融資支援の実績を持たない事務所も多いので、年間の支援件数を確認してください。

財務コンサルタント

融資に特化しているぶん、計画書の作り込みや面談対策は手厚い傾向があります。一方で創業後の関与が薄くなりがちです。

行政書士

書類作成の代行が中心です。数値計画の設計や面談対策まで含まれるかは事務所によります。

認定支援機関

国が認定した支援機関で、公庫の一部の制度では認定支援機関の関与が要件になっています。税理士・コンサル・金融機関などが認定を受けています。

確認したい4つのこと

依頼先を決める前に、次の点を聞いてください。

  1. 年間の創業融資支援の件数(実績が薄いと相場観がありません)
  2. 費用の総額(顧問契約とセットの場合は月額を含めた総額で)
  3. どこまでやってくれるか(書類作成のみか、面談対策・同行まで含むか)
  4. 通らなかった場合の対応(再申請の支援があるか、費用はどうなるか)

とくに4つ目は聞きづらいのですが、重要です。創業融資は一度落ちると6か月ほど間を空けるのが一般的で、その間の資金繰りをどうするかまで一緒に考えてくれるかどうかで、支援の質が分かれます。

自分でやるか、頼むか

すべての人が支援を受けるべきだとは思いません。判断の目安を挙げます。

自分でやってよい場合

  • 調達希望額が300万円以下で、自己資金が十分にある
  • 前職が同業種で、実績を数字で示せる
  • 決算書や試算表を自分で読める
  • 開業までに1か月以上の準備期間がある

頼んだほうがよい場合

  • 調達希望額が500万円を超える
  • 未経験の業種で始める
  • 自己資金が必要額の3割を下回る
  • 開業日が決まっていて時間がない
  • 制度融資と公庫を併用したい

判断の軸は、費用と調達額の差です。30万円払って調達額が200万円増えるなら合理的ですし、増えないなら自分でやるべきです。相談の段階で「いくら調達できそうか」の見立てを示してくれる支援者を選んでください。

創業融資の後こそが本番

創業融資は、借りて終わりではありません。返済は翌月から、あるいは据置期間の後から始まります。

計画通りに売上が立たなければ、返済は資金繰りを圧迫します。実際に苦しくなるのは、借りた直後ではなく6か月から1年後です。運転資金が想定より早く減り、追加の資金調達が必要になる。しかし創業融資は一度しか使えません。

だからこそ、融資の支援だけで終わる関係より、その後の資金繰りを一緒に見てくれる相手のほうが価値があります。 月次の数字を見て、資金がいつ尽きるかを先に把握できていれば、打てる手は増えます。

合同会社種火は、福岡県大川市と熊本市を拠点に、創業融資の支援から創業後の経理・資金繰り管理までを一貫してお引き受けしています。「いくら借りられそうか」「そもそも今のタイミングでよいか」といった段階のご相談も承ります。

融資の準備から借りた後の資金繰りまで一緒に見てほしい場合は、種火の社外CFOサービスで伴走しています。

よくある質問

Q. 創業前でないと申し込めませんか。

いいえ。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」(旧:新規開業資金)は、事業開始後おおむね7年以内であれば対象になります。ただし審査で決算内容を見られるため、開業前のほうが計画ベースで審査される分、通りやすい面はあります。

Q. 自己資金はいくら必要ですか。

制度上の下限は設けられていませんが、実務上は必要額の1〜3割程度が目安です。重要なのは金額そのものより、どうやって貯めたかです。通帳で毎月の積立が確認できる資金は評価されますが、直前に一括で入金された資金は「見せ金」とみなされ、逆効果になります。

Q. サポートを頼むと、いつから動けばいいですか。

開業予定日の3か月前が目安です。公庫は申し込みから着金まで1か月前後、制度融資は2〜3か月かかります。物件の契約や設備の発注が先行すると、資金が間に合わなくなります。

Q. 通らなかった場合、すぐ再申請できますか。

制度上の制限はありませんが、実務的には6か月ほど空けるのが一般的です。同じ内容で出し直しても結果は変わらないため、落ちた理由を分析して事業計画そのものを見直す期間が必要になります。

Q. 融資と補助金はどちらを使うべきですか。

両方です。性質が違います。融資は返済が必要ですが、申し込めばすぐ動き、使途の自由度も比較的高い。補助金は返済不要ですが、採択率があり、原則として後払いです。補助金の入金までのつなぎ資金として融資を使う、という組み合わせが現実的です。

まとめ

創業融資のサポートは、書類の代行ではなく、資金計画の設計から面談対策までを含む伴走支援です。

  • 費用は成功報酬で調達額の2〜5%が相場
  • 頼めば必ず通るわけではないが、落ちる理由をつぶし、調達額を最大化できる
  • 依頼先は年間の支援件数と、対応範囲と、総額で選ぶ
  • 自己資金や経歴に課題がある場合、それを最初に伝えてくれる支援者が信頼できる
  • 融資は一度きり。借りた後の資金繰りまで見てくれる相手を選ぶ

創業融資は、事業の最初の意思決定です。ここで無理のない資金計画を組めるかどうかが、その後の数年を左右します。判断に迷う段階でも、お気軽にご相談ください。