資金繰りが苦しくなると、誰かに相談したくなります。
ただ「資金繰りコンサル」と名乗るサービスの中身は幅があります。月次で数字を見て一緒に判断してくれるところもあれば、融資の申込書類を作るだけのところ、そして資金調達の紹介料だけを目的にしているところもあります。
この記事では、実際に何をしてもらえるのか、費用はいくらか、そして頼むべき状態と自社でできる範囲を整理します。
資金繰りコンサルで何をしてもらえるのか
実務としては、次の5つが中心です。
1. 現状の把握
まず数字を見るところから始まります。決算書、試算表、借入金の返済予定表、通帳。
ここで見るのは、資金がどこで詰まっているかです。売掛金の回収が遅いのか、在庫が膨らんでいるのか、借入返済が重すぎるのか、そもそも赤字なのか。原因によって打つ手がまったく違うためです。
2. 資金繰り表の作成
6か月から1年先までの入出金を並べ、いつ資金が尽きるかを明らかにします。
多くの中小企業では、この表が作られていません。作られていても更新が止まっています。ここを整えるだけで、判断の材料が変わります。
3. 改善策の設計
借りる前にできることを洗い出します。入金サイトの短縮、請求書の早期発行、在庫の圧縮、固定費の見直し、支払サイトの交渉。
借りずに済む金額は、借りないほうがよいという前提で組み立てます。
4. 資金調達の支援
それでも足りない分を調達します。公庫、制度融資、保証付き融資、当座貸越。事業の状況に応じて適した先を選び、必要な書類を整えます。
5. 金融機関との交渉支援
返済が厳しい場合の条件変更(リスケジュール)や、追加融資の相談に同席することもあります。
金融機関に対してどう説明すれば伝わるかを知っているかどうかで、結果が変わる場面です。
費用相場
| 契約形態 | 相場 | 内容 |
|---|---|---|
| スポット相談 | 1〜5万円/回 | 現状診断、方向性の相談 |
| 資金繰り表の作成 | 5万〜20万円 | 初回の設計費用 |
| 月次顧問 | 月3万〜20万円 | 継続的な数字の確認と助言 |
| 資金調達の成功報酬 | 調達額の2〜5% | 融資支援 |
| 社外CFO型 | 月10万〜50万円 | 財務全般を継続的に担う |
規模と関与の深さで大きく変わります。年商1億円前後の会社で月次の資金繰り管理を頼む場合、月5万〜10万円あたりが一つの目安です。資金繰りの考え方の全体像は、資金繰りの基本と管理方法にまとめています。
顧問契約とセットの場合
税理士事務所では、「顧問契約の範囲内で資金繰りも見る」という形が多くあります。
悪い話ではありませんが、実際にどこまで見てもらえるかを確認してください。 決算と申告が中心で、資金繰りは年に一度触れる程度、というケースもあります。
税理士・社外CFOとの違い
似た立場のサービスがあるので、整理しておきます。
税理士:税務申告と税務相談が本来の業務です。資金繰り支援は事務所によって扱いが大きく違います。融資支援を年に数十件扱う事務所もあれば、まったく扱わない事務所もあります。
財務コンサルタント:資金調達や財務改善に特化しています。融資の通し方に詳しい一方、税務や日常の経理には関与しないことが多くなります。
社外CFO:財務全般を継続的に担います。資金繰りだけでなく、事業計画、投資判断、金融機関との関係構築まで含みます。関与が深いぶん費用も高くなります。
経理代行:記帳や請求といった実務を引き受けます。数字を作る側なので、資金繰り表の元データを持っています。
資金繰り表の書式は、日本政策金融公庫も公開しています(日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード」)。
自社が何を必要としているかで選ぶ相手が変わります。数字が出ていないなら経理代行、数字はあるが読めないなら資金繰りコンサル、財務全体を任せたいなら社外CFOです。
頼むべき状態
次のいずれかに当てはまるなら、外部の目を入れる価値があります。
- 資金繰り表を作っていない、または更新が止まっている
- 月次の数字が出るのが翌月末以降
- 3か月先の資金残高が分からない
- 借入の返済が利益を上回っている
- 金融機関への説明がうまくいっていない
- 過去に融資を断られた
- 社長以外に数字を見る人がいない
とくに最初の3つは、判断の材料そのものが無い状態です。ここを整えるだけで、打てる手が増えます。
自社でできること
一方、次はコンサルを入れなくてもできます。むしろ自分でやったほうが早い部分です。
資金繰り表を6か月先まで引く
項目は4つで足ります。前月繰越、入金、出金、当月末残高。
支出は多くが決まっています。家賃、リース、保険、借入返済、税金。これらを先に埋めるだけで、資金が厳しくなる月が見えます。売上は確定分だけを入れてください。
請求書を早く出す
月末締めの請求書を翌月10日に出すのと翌月1日に出すのとでは、入金が1か月ずれることがあります。
未回収の売掛金を確認する
期日を過ぎた売掛金はないか。月次で一覧を見る習慣があるだけで、貸倒れは減ります。
固定費を点検する
年に一度、口座とカードの明細を1年分並べて、毎月引き落とされているものを書き出す。使っていないものが必ず見つかります。
これらを実行してから相談すると、話が早く進みます。 現状把握の工程を自分で済ませているぶん、費用も抑えられます。
状態別・優先して手をつけること
資金繰りの苦しさには段階があります。段階によって、相談すべき相手も打つ手も変わります。
段階1:余裕はあるが先が読めない
資金は回っているが、3か月先の残高が分からない状態です。
やるべきは、資金繰り表を作ることだけです。この段階でコンサルに月10万円を払う必要はありません。エクセルで6か月先まで引いて、月次で更新する習慣を作れば十分です。
エクセルで足りなくなるのはどんな状態かは、資金繰り管理システムは必要かにまとめています。
必要なのは仕組みであって、助言ではありません。
段階2:数字が遅れていて把握できない
記帳が数か月遅れ、直近の試算表がない状態。
この段階の問題は、資金繰りではなく経理の遅れです。コンサルに相談しても、材料がないため具体的な話になりません。
まず記帳を追いつかせることが先です。自社で難しければ経理代行を検討してください。月数万円で入力から解放され、月次の数字が定期的に出るようになります。
段階3:数か月先に資金が不足する見込み
資金繰り表を引いたら、4か月後にマイナスになると分かった、という状態。
ここが相談のベストタイミングです。融資の申し込みから着金まで1〜3か月かかるため、まだ選択肢があります。改善策を実行する時間も残っています。
金融機関に対しても、「今は回っているが、この時期に不足する見込みなので今のうちに」という説明ができます。追い込まれてからの申し込みとは印象がまったく違います。
段階4:来月の支払いが厳しい
支払いが目前に迫っている状態。
この段階では、融資は間に合いません。できるのは、支払いの優先順位を決めることと、取引先・金融機関に事前に連絡することです。
支払いの優先順位は、従業員の給与 → 税金・社会保険料 → 借入返済 → 仕入先 → 家賃・光熱費の順が実務的です。いずれも黙って遅れないことが重要で、事前に連絡すれば交渉の余地がありますが、無断の遅延は信頼を失います。
段階5:返済が続けられない
借入の返済が利益を上回り、返すほど資金が減る構造になっている状態。
条件変更(リスケジュール)の交渉が選択肢になります。返済額の減額や期間の延長により、月々の負担を軽くします。
延滞する前に相談してください。延滞は信用情報に記録され、以後の調達が困難になります。この交渉は経験の差が出やすいため、支援者を入れる価値がもっとも高い場面です。
選ぶときの確認点
実績と資格
年間の支援件数、認定経営革新等支援機関かどうか、同業種での支援経験。これらを具体的に聞いてください。曖昧な返答しか返ってこない場合は避けたほうが無難です。
何をどこまでやるか
現状診断だけか、資金繰り表の作成まで含むか、金融機関への同行はあるか。契約前に書面で確認してください。
費用の総額
月額だけでなく、初期費用、成功報酬、契約期間を含めた総額で比べます。
継続して見てくれるか
資金繰りは一度整えて終わりではありません。月次で数字を見続ける相手かどうかが、実際の効果を左右します。単発の診断だけで終わる契約では、習慣が定着しません。
悪い見立ても言うか
初回相談で「大丈夫です、なんとかなります」しか言わない相手は要注意です。
まともな支援者は、厳しい状況なら厳しいと言います。融資が難しい状態なら、その理由と、何をどれくらいの期間で改善すべきかを示せるはずです。
「経営改善」「事業再生」との違い
資金繰りコンサルを名乗る会社の多くが、あわせて「経営改善」「事業再生」を掲げています。これらは連続していますが、関わる深さが違います。
資金繰り改善
今ある事業のまま、資金の流れを整える段階です。
入金を早め、支出を遅らせ、不要な固定費を削り、必要なら調達する。事業そのものは変えません。多くの中小企業が必要としているのはこの範囲です。
経営改善
収支構造そのものに手を入れる段階です。
赤字が続いている場合、資金の流れを整えても根本は変わりません。不採算部門の撤退、価格の見直し、人員配置の変更といった判断が必要になります。
金融機関から「経営改善計画書」の提出を求められている場合は、この段階にあります。
事業再生
債務が返済能力を超えている段階です。
リスケジュール、債務の一部免除、法的整理といった手続きが視野に入ります。専門性が高く、弁護士や中小企業再生支援協議会との連携が必要になることもあります。
どこに相談すべきか
自社がどの段階かで、相談先が変わります。
| 段階 | 相談先 |
|---|---|
| 資金繰りを整えたい | 経理代行、資金繰りコンサル、税理士 |
| 収支構造を見直したい | 経営コンサル、中小企業診断士、認定支援機関 |
| 返済が続けられない | 事業再生の専門家、中小企業活性化協議会 |
資金繰りの相談に行ったら事業再生の話になった、という場合は、相手が段階を見誤っているか、自社が思っているより状況が進んでいるかのどちらかです。どちらなのかは確認したほうがよい点です。
地域の相談先という選択肢
資金繰りの相談は、遠方の専門家より地域の事情を知っている相手のほうが有利に働くことがあります。
理由は2つあります。
地域の金融機関との関係:どの金融機関が創業案件に前向きか、どの支店の担当者が話を聞いてくれるか。この情報は公開されていません。地域で長く活動している支援者は知っています。
自治体の制度に詳しい:制度融資や補助金は自治体ごとに条件が違います。地元の制度を把握している相手のほうが、使える手を漏らしません。
一方、オンラインで完結する支援も増えています。月次で数字を見るだけなら距離は問題になりません。 金融機関への同行を希望するかどうかで、地域性の重要度は変わります。
避けるべき業者
この領域には、残念ながら問題のある事業者も存在します。
「必ず融資が通ります」と断言する:融資の可否を決めるのは金融機関です。支援者が保証できるものではありません。
粉飾を持ちかける:売上の水増し、赤字の隠蔽。これは犯罪であり、発覚すれば一括返済を求められ、以後どの金融機関からも借りられなくなります。責任を負うのは経営者本人です。
ファクタリングへ誘導する:資金繰りの相談をしたはずが、いつのまにか売掛金の売却の話になっている場合は注意してください。手数料は年利換算で数十%から100%を超えることがあります。融資で調達できる状況なら、まず融資を検討すべきです。
着手金だけ取って動かない:着手金が何に対する対価かを聞いてください。具体的に説明できない場合は避けるべきです。
契約書を作らない:報酬の計算方法、支払時期、成果が出なかった場合の扱い。書面にないと後で揉めます。
事業内容を聞かない:初回相談で事業の中身をほとんど聞かずに「いけますよ」と言う相手は、判断する材料を持っていません。
相談前に用意するもの
次を持って相談すると、初回から具体的な話ができます。
- 決算書(法人は3期分、個人事業主は確定申告書3年分)
- 直近の試算表
- 借入金の返済予定表(全金融機関分)
- 通帳(直近半年〜1年)
- 売掛金・買掛金の一覧
- いつ資金が厳しくなりそうか(分かる範囲で)
これらが揃っていれば、初回で調達可能額の見立てまで出せることが多くなります。
資金繰りは数字が出ていないと始まらない
最後に、順番の話をします。
資金繰りの相談を受けていて多いのは、そもそも月次の数字が出ていないケースです。記帳が数か月遅れていて、直近の試算表がない。この状態では、資金繰り表も作れませんし、金融機関に説明する材料もありません。
多くの中小企業で、月次の数字が出るのは翌月末以降です。これでは2か月前の状態を見ていることになり、手を打つタイミングを逃します。翌月10日までに数字が出る体制があれば、資金がいつ厳しくなるかを事前に読めます。
3か月前に分かっていれば、融資の申し込みも取引先への相談も間に合います。尽きてから動くと、高い手数料の調達に頼ることになり、状況はさらに悪化します。
合同会社種火は、福岡県大川市と熊本市を拠点に、経理代行と資金繰り管理を一体でお引き受けしています。数字を作るところから、それを見て次の一手を考えるところまでを続けて担当するため、「数字が出ていないので相談できない」という状態を作りません。
「今の状態でやっていけるのか」という段階のご相談も承ります。厳しいと判断した場合は、その理由も含めて率直にお伝えします。
資金繰りや財務の数字を毎月一緒に見てほしい場合は、種火の社外CFOサービスで伴走しています。
よくある質問
Q. 赤字でも相談できますか。
できます。むしろ赤字の状態こそ、原因の切り分けが必要です。一時的な赤字なのか構造的な赤字なのかで、打つ手がまったく違います。
Q. 顧問税理士がいますが、別に頼んでよいですか。
問題ありません。ただし決算書や試算表の提供が必要になるため、事前に伝えておくほうがスムーズです。顧問税理士が資金繰り支援を扱っていないケースは珍しくありません。
Q. どれくらいの期間で効果が出ますか。
現状把握と資金繰り表の作成に1〜2か月。改善策の実行に3〜6か月というのが一般的な流れです。ただし資金が尽きる直前の相談では選択肢が限られます。 余裕のあるうちに相談するほど、打てる手は多くなります。
Q. 費用を払う余裕がありません。
商工会・商工会議所、よろず支援拠点、日本政策金融公庫の窓口は無料で相談できます。まずそこで全体像をつかんでから、有料の支援が必要かを判断してください。
Q. 契約期間はどれくらいが一般的ですか。
月次顧問の場合、6か月から1年が多くなります。資金繰りの改善には時間がかかるため、数か月では効果が見えにくいためです。ただし最低契約期間と解約条件は必ず確認してください。
Q. 誰が担当するかは重要ですか。
重要です。この領域は担当者個人の経験に依存します。金融機関出身者かどうか、同業種の支援経験があるか、年間何件扱っているか。会社ではなく人を見て選ぶほうが実態に合います。
契約前に、実際に担当する人と話す機会をもらってください。営業担当と実務担当が別、というケースもあります。
Q. どんな資料を毎月やり取りしますか。
一般的には、試算表、資金繰り表、借入金の返済予定表、売掛金・買掛金の一覧です。これらを毎月更新して共有し、月次のミーティングで確認する流れになります。
この資料が作れていない会社では、まずそこからになります。経理が追いついていない状態でコンサル契約を結ぶと、最初の数か月が資料整備で終わります。
まとめ
- 資金繰りコンサルの中身は、現状把握・資金繰り表の作成・改善策の設計・資金調達・金融機関との交渉支援
- 費用は月次顧問で月3万〜20万円。年商1億円前後なら月5万〜10万円が目安
- 「数字が出ていない」なら経理代行、「数字はあるが読めない」ならコンサル、「財務全体」なら社外CFO
- 資金繰り表の作成、請求書の早期発行、固定費の点検は自社でできる。先にやると費用が抑えられる
- 「必ず通る」と断言する、粉飾を勧める、ファクタリングへ誘導する業者は避ける
- 無料の相談先(商工会、よろず支援拠点、公庫)を先に使う
- 資金が尽きる直前では選択肢が限られる。余裕のあるうちに相談する
資金繰りの改善は、特別な技術ではなく数字を早く出して、先を読む習慣の問題です。そこを外部に頼るかどうかは、自社に時間と人がいるかで決めてください。
判断に迷ったら、まず無料の窓口で現状を話してみることをおすすめします。そこで「これは自社でできる」と分かれば費用はかかりませんし、「専門家が要る」と分かれば、何を頼むべきかが明確になった状態で探せます。
