顧問税理士がいる会社でも、年末調整をどこまで頼めるのかが分からないという声があります。「顧問料に含まれているのか」「別料金なのか」「そもそも頼んでいいのか」といった疑問です。

この記事では、年末調整を税理士に依頼した場合にどこまでやってもらえるのか、費用はいくらか、頼むべきかどうかの判断基準を整理します。

税理士に年末調整を依頼するとどこまでしてくれるか

税理士に依頼できる範囲は明確です。年末調整の税務に関わる部分すべてを任せられます。

作業 税理士に依頼できるか
年末調整の税額計算 できる
源泉徴収票の作成 できる
法定調書合計表の作成・提出 できる
給与支払報告書の作成・提出 できる
従業員の税務に関する質問への回答 できる
申告書の配布・回収・不備確認 依頼できるが、対応しない事務所もある
社会保険・労働保険の手続き できない(社会保険労務士の独占業務)

年末調整の税務書類を作成して提出する行為は、税理士法で税理士の独占業務とされています。逆に言えば、税理士に頼めばこの部分は完結します。経理代行会社に頼む場合は、この部分だけ別途手当てが必要になります。

一方で、社会保険や労働保険の手続きは税理士では対応できません。扶養の異動に伴う健康保険の手続きが必要な場合、社労士か自社で行うことになります。

税理士に依頼するメリット

事務作業を自社で抱えている会社が、税理士に依頼して得られるものを整理します。

税額計算の正確性が担保される。 年末調整は控除の種類が多く、配偶者控除、扶養控除、保険料控除、住宅ローン控除が絡むと判断が複雑になります。所得金額調整控除のように条件が細かいものもあります。ここを専門家が処理することで、誤りによる修正や追徴のリスクが下がります。

税制改正への対応。 控除の要件や上限額は改正されます。自社で処理していると、改正に気づかないまま前年と同じ扱いをしてしまうことがあります。税理士に依頼していれば、改正内容は反映された状態で処理されます。

期限の管理を任せられる。 法定調書合計表と給与支払報告書は翌年1月31日が期限です。年末年始を挟むため、自社で処理していると年明けに慌てることになります。

従業員の税務相談に答えられる。 「ふるさと納税をしたが年末調整でどうなるのか」「医療費控除は確定申告が必要か」といった質問に、根拠のある回答ができます。税額に関わる判断を伴う回答は税理士以外が行えませんので、この点は代行会社では代替できません。

確定申告との連続性。 年末調整で処理しきれない控除がある従業員に対して、確定申告が必要かどうかを判断してもらえます。役員や高額給与の従業員がいる会社では実務的な意味があります。

事務作業まで頼めるかは事務所によって違う

見落としやすいのがここです。税務計算はどの税理士でも対応しますが、その手前の事務作業は事務所によって扱いが分かれます。

年末調整で最も時間がかかるのは、従業員への申告書の配布、回収、記載漏れの確認、控除証明書の突き合わせです。この部分を引き受ける事務所と、「整理された状態で渡してください」という事務所があります。

依頼するときは、次の3つを具体的に確認してください。

申告書の配布と回収を誰が行うか。 事務所が従業員に直接案内するのか、会社が回収してまとめて渡すのか。

記載不備の確認を誰が行うか。 控除証明書の添付漏れや扶養情報の誤りを、事務所が見つけて差し戻してくれるのか。

従業員からの質問に誰が答えるか。 「保険料控除証明書をなくした」といった問い合わせの一次対応です。

ここを確認せずに依頼すると、「税理士に頼んだのに社内の作業が減らなかった」という結果になります。

費用の相場

年末調整の費用は、顧問契約の中に含まれる場合と、別料金になる場合があります。

顧問契約に含まれるケース

月額の顧問料に年末調整が含まれている契約もあります。ただし多くの場合、含まれるのは税務計算の部分のみで、従業員数が一定を超えると追加料金が発生します。

契約書を確認し、「年末調整」がどう書かれているかを見てください。記載がない場合は別料金と考えたほうが安全です。

別料金のケース

項目 目安
基本料金 10,000〜30,000円
従業員1人あたり 1,000〜3,000円
従業員30名の場合の合計 40,000〜120,000円程度

事務作業まで含む場合は、この上限に近い水準になります。税務計算のみであれば下限に近くなります。

顧問税理士に依頼する場合、11月頃に「今年の年末調整はいくらになりますか」と確認しておくことをおすすめします。年明けに請求書を見て想定と違ったという相談は少なくありません。

年末調整の対象になる人・ならない人

依頼する前に、自社の誰が対象なのかを把握しておく必要があります。対象者を間違えると、税理士に渡す資料も間違います。

対象になる人

  • 年末時点で在籍している従業員(正社員、パート、アルバイトを含む)
  • 給与所得者の扶養控除等申告書を提出している人
  • 年の途中で入社し、年末時点で在籍している人(前職の源泉徴収票が必要)

対象にならない人

  • 給与の年間支給額が2,000万円を超える人(本人が確定申告)
  • 年の途中で退職した人(一定の条件を除く)
  • 2か所以上から給与を受けていて、他社に扶養控除等申告書を提出している人
  • 日雇いなど、継続的な雇用関係にない人

役員も対象になります。 給与の支払いを受けているためです。ここを見落として役員分の資料を渡さないケースがあります。

判断に迷う人がいる場合は、その人の状況を税理士に伝えて確認してください。対象外の人を含めて処理すると、修正が必要になります。

必要な書類と渡す時期

税理士に依頼する場合、会社側で用意して渡す書類があります。

書類 誰が用意するか
給与所得者の扶養控除等申告書 従業員が記入、会社が回収
基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書 従業員が記入
保険料控除申告書と控除証明書 従業員が記入・添付
住宅ローン控除の申告書と残高証明書 従業員が用意(2年目以降)
給与・賞与の支給データ 会社
中途入社者の前職源泉徴収票 本人が前職から取得
従業員名簿(氏名、住所、マイナンバー) 会社

渡す時期の目安は11月下旬から12月上旬です。税理士側も同じ時期に他社の年末調整を抱えているため、遅れると対応が年明けにずれ込みます。

12月の給与や賞与の額が確定しないと年間支給額が固まりません。 賞与の支給日が12月下旬だと、計算が年末ぎりぎりになります。可能であれば12月上旬に前倒しすると余裕ができます。

依頼する流れ

時期 内容
10月 顧問税理士に依頼の意向と費用を確認
11月上旬 従業員へ申告書を配布
11月下旬 申告書を回収、不備を確認
12月上旬 給与データと申告書を税理士へ提出
12月の給与または賞与 過不足税額の精算
12月下旬〜1月 源泉徴収票の交付
1月31日まで 法定調書合計表、給与支払報告書の提出

法定調書合計表と給与支払報告書の提出期限は翌年1月31日です。この期限から逆算して、税理士側の締め切りが設定されます。

税理士に頼むべきか、代行会社に頼むべきか

判断の基準は顧問税理士がすでにいるかどうかと、事務作業の負担がどこにあるかです。

状況 適した依頼先
顧問税理士がいて、税務計算だけ任せたい 顧問税理士
顧問税理士がいるが、申告書の回収が負担 事務作業は経理代行会社、税務は顧問税理士
顧問税理士がいない 税理士事務所に一括、または経理代行会社経由で紹介を受ける
給与計算そのものも外注したい 経理代行会社(税務は連携先の税理士)

税理士に事務作業まで頼むと、税理士の単価で事務作業を買うことになります。 申告書の回収や不備確認は資格を必要としない作業であり、単価の安い先に出すほうが合理的です。

一方で、窓口が2つに分かれると連絡の手間が増えます。従業員20名程度までなら、顧問税理士に一括で頼むほうが管理は楽です。

依頼先ごとの範囲と費用は年末調整の代行・アウトソーシングで詳しく整理しています。

年末調整を依頼できる税理士の選び方

顧問税理士がいない場合、または変更を検討している場合の判断軸です。

給与計算に対応しているか

税理士事務所によって、得意分野が異なります。法人税の申告や決算を主業務にしている事務所では、給与計算や年末調整の実務経験が少ない場合があります。

年末調整は件数をこなす作業であり、処理の速さと正確さは経験量に依存します。従業員数が多い会社であれば、給与関連の実務を日常的に扱っている事務所を選んでください。

社労士と連携しているか

社会保険・労働保険の手続きは税理士では対応できません。扶養の異動があると健康保険の手続きが必要になります。

税理士事務所が社労士と提携しているか、社労士法人を併設しているかを確認してください。窓口が一本化されていると、扶養の変更を伝えるだけで両方の手続きが進みます。

電子化に対応しているか

年末調整の申告書は電子データでの提出が認められています。従業員がシステム上で入力し、控除証明書も電子データで取り込む方式です。

紙のやり取りしか受け付けない事務所だと、この方式に移行できません。将来的に人数が増える見込みがあるなら、電子化に対応しているかを確認しておくべきです。

連絡が取れるか

年末調整の時期は税理士側も繁忙期です。質問への回答に1週間かかると、期限に影響します。

繁忙期の連絡手段と、回答までの目安時間を契約前に聞いてください。「メールは3営業日以内に返信」といった基準が示される事務所のほうが、実務は進みます。

料金の内訳が明示されているか

「年末調整一式」という見積もりでは、事務作業が含まれるのか判断できません。基本料金と1人あたり単価、そして含まれる作業範囲が書き分けられているかを見てください。

依頼するときの注意点

顧問税理士に事前に伝える。 年末調整を別会社に出す場合も、顧問税理士に伝えておいてください。資料の受け渡し方法を先に決めておくと、年末に混乱しません。

マイナンバーの取り扱い。 年末調整では従業員本人と扶養親族のマイナンバーを扱います。税理士に預ける場合も、委託先の監督義務は会社側に残ります。受け渡し方法を確認してください。

期限に間に合わない場合の対応。 資料の提出が遅れて期限に間に合わない場合、どうなるかを事前に聞いておいてください。従業員への源泉徴収票の交付が遅れると、確定申告をする人に影響します。

翌年の分の相談。 毎年同じ作業が発生します。今年の進め方で不便だった点を記録し、翌年の依頼時に改善を相談してください。

よくある質問

Q. 顧問税理士に年末調整を頼むと嫌がられませんか

税理士の通常業務の範囲であり、問題ありません。ただし11月以降の依頼は混み合います。10月中に意向を伝えておくと調整しやすくなります。

Q. 従業員が5名でも税理士に頼めますか

頼めます。基本料金があるため1人あたりの単価は割高になりますが、人数が少ないほど税務計算の手間も小さいため、顧問料の範囲で対応してもらえる場合もあります。まず確認してください。

Q. 年末調整だけ他の税理士に頼めますか

制度上は可能ですが、顧問税理士との関係で調整が必要です。給与データや過去の資料を共有する必要があり、二重の手間が発生します。顧問税理士に不満があるなら、年末調整だけを切り出すより顧問契約自体を見直すほうが根本的です。

Q. 自社で処理して税理士に確認だけ頼めますか

対応する事務所もありますが、責任の所在が曖昧になります。計算に誤りがあった場合、確認だけを依頼した範囲でどこまで責任を負うのかが不明確です。依頼するなら計算から任せるほうが確実です。

まとめ

  • 税理士に依頼すれば、年末調整の税務部分は完結する。書類の作成・提出は税理士の独占業務
  • 社会保険・労働保険の手続きは税理士では対応できない(社労士の領域)
  • 申告書の配布・回収・不備確認まで頼めるかは事務所によって違う。必ず確認する
  • 費用は基本料金1〜3万円+1人あたり1,000〜3,000円が目安。顧問契約に含まれるかを契約書で確認
  • 役員も年末調整の対象。給与2,000万円超の人は対象外
  • 事務作業は税理士の単価で買わないほうが合理的。分ける場合は窓口の手間と比較する

年末調整の負担をどこから軽くすべきか、顧問税理士との分担も含めてご相談ください。