経理代行を検討して3社から見積を取ったものの、並べてみたら比較できなかった。よくある話です。

A社は「月額3万円〜」、B社は「1仕訳80円」、C社は「30チケット月5万円」。単位が違うので、そのままでは高いのか安いのかが判断できません。しかも各社の「月額」に含まれる業務範囲が違うため、金額だけを見比べると必ず判断を誤ります。

この記事では、経理代行の料金表をどう読み、どう横並びにするかを整理します。料金表の読み方さえ分かれば、見積の比較は30分で終わります。

なぜ経理代行の料金表は比較しにくいのか

理由は3つあります。

第一に、単位がバラバラだからです。 仕訳数、伝票数、月額固定、チケット、作業時間。会社によって課金の単位が違うため、同じ土俵に乗せる作業が必要になります。

第二に、「月額に含まれる範囲」が違うからです。 ある会社の月額には試算表の作成が含まれ、別の会社では別料金です。決算対応、年末調整、給与計算がどこまで入るかは会社ごとに異なります。

第三に、料金表に書かれていない作業があるからです。 領収書の整理、証憑のスキャン、資料の回収。これらを自社でやるのか委託先がやるのかで、実際の負担はまったく変わります。

つまり料金表は「そのままでは比較できない」ことを前提に読む必要があります。比較の作業とは、単位を揃え、範囲を揃え、抜けを埋めることです。

経理代行の料金体系 ― 4つの型

まず、自分が受け取った料金表がどの型かを見分けます。

① 仕訳数課金型(従量制)

「1仕訳あたり50〜100円」「月100仕訳まで1万円、以降1仕訳80円」という形式です。最も一般的な型で、記帳代行を中心とする会社に多く見られます。

  • 向いている会社:取引件数が読みやすく、月ごとの変動が小さい
  • 注意点:件数が想定より増えると青天井になる。上限設定の有無を確認する

② 定額型

「月額5万円で記帳・試算表・支払処理まで一式」という形式です。BPO会社や、経理業務全般を請け負う会社に多く見られます。

  • 向いている会社:業務量が安定していて、毎月の予算を固定したい
  • 注意点:想定より業務量が少ない月も同額。逆に多い月は割安になる

③ チケット制(作業量ポイント型)

作業を単位化して「1か月30チケット」のように購入する形式です。繁閑差が大きい会社向けに近年増えています。

  • 向いている会社:月によって業務量が大きく変わる
  • 注意点:チケットの消費レート(どの作業が何チケットか)を必ず確認する。繰越の可否も重要

④ 時間課金型

「1時間5,000円」のように作業時間で課金する形式です。フリーランスや小規模事務所に多く見られます。

  • 向いている会社:業務範囲が固まっておらず、まず試したい
  • 注意点:作業効率が委託先に依存する。上限時間を決めないと費用が読めない

「1仕訳」の数え方を確認する

仕訳数課金型を選ぶなら、ここは必ず確認してください。同じ取引でも、会社によって仕訳数の数え方が違います。

数え方の違いが生む差

たとえば、1枚の請求書で3つの経費項目を計上する場合を考えます。

  • A社の数え方:借方が3行あるので3仕訳
  • B社の数え方:伝票1枚なので1仕訳

1仕訳80円なら、A社は240円、B社は80円です。3倍の差が出ます。

確認すべき5つの質問

見積依頼の際、次を質問してください。答えが曖昧な会社は、後から請求が膨らむ可能性があります。

  1. 1仕訳の定義は「借方の行数」か「伝票枚数」か
  2. 通帳の入出金は1件ごとに1仕訳か
  3. クレジットカード明細は明細1行ごとか、締め日ごとの一括か
  4. 給与の仕訳は1人1仕訳か、支給日ごとに1仕訳か
  5. 月の途中で件数が想定を超えた場合、どう扱うか

3つ目はとくに差が出ます。カード明細が月100行ある会社なら、1行ごとに数える会社と一括で数える会社では、月額が数万円変わります。

料金表に載っていない「追加料金」

見積の月額だけで判断すると、運用開始後に想定外の請求が来ます。以下は別料金になっていることが多い項目です。

項目 料金の目安 備考
決算対応 月額の3〜6か月分 税理士が別なら二重に発生することも
年末調整 1人あたり1,000〜3,000円 従業員数で変動
給与計算 1人あたり500〜1,500円 基本料金が別途かかることも
請求書の発行・郵送 1通200〜400円 郵送実費を含むか要確認
支払データの作成 1件100〜300円 振込実行は原則自社
証憑のスキャン・整理 月5,000〜20,000円 紙が多い会社は要注意
過去分の遡及処理 通常単価の1.2〜1.5倍 溜めているほど高くなる
会計ソフトの利用料 月2,000〜5,000円 委託先負担か自社負担か
訪問・対面打ち合わせ 1回10,000円〜 オンライン標準の会社が増加

「一式」という表記に注意

料金表に「記帳一式」「経理業務一式」と書かれている場合、何が「一式」に含まれるのかを必ず文書で確認してください。口頭で「だいたい含まれます」と言われたまま契約すると、認識のずれが必ず出ます。

具体的には、次のリストを渡して○×をつけてもらうのが確実です。

  • 領収書・請求書の仕訳入力
  • 通帳・カード明細の取り込み
  • 売掛金・買掛金の管理
  • 月次試算表の作成
  • 月次の報告・質疑応答
  • 支払データの作成
  • 請求書の発行
  • 給与計算
  • 年末調整
  • 決算書の作成補助

業務量別・料金表の読み取り例

自社がどのレンジに入るかを掴んでおくと、提示された金額が妥当かどうかを即座に判断できます。以下は市場に出ている料金表を横断して整理した目安です。

小規模(月50仕訳未満/従業員5名以下)

業務 月額の目安
記帳のみ 10,000〜20,000円
記帳+月次試算表 20,000〜30,000円
記帳+請求書発行(月30通) 35,000〜50,000円

このレンジでは、月額基本料金の比重が大きくなります。従量部分より「基本料金がいくらか」で総額が決まるため、仕訳単価の比較にはあまり意味がありません。

中規模(月100〜300仕訳/従業員10〜30名)

業務 月額の目安
記帳+月次試算表 40,000〜80,000円
+請求書発行・入金消込 70,000〜130,000円
+給与計算(20名) 100,000〜180,000円

このレンジになると、従量部分の比重が上がります。仕訳の数え方の違いが月数万円の差になるため、定義の確認が費用に直結します。

大きめ(月300仕訳以上/従業員30名超)

定額型やチケット制の提案が増えます。従量制のままだと費用が読みにくくなるためです。この規模では、料金そのものより担当体制(何名で対応するか、繁忙期に増員できるか)が比較の軸になります。

自社の位置を確認する方法

会計ソフトの「仕訳日記帳」を月単位で出力すれば、仕訳数はすぐ数えられます。直近3か月分を数え、平均と最大値の両方を出しておいてください。最大値を伝えずに契約すると、繁忙月に超過料金が発生します。

見積を横並びにする4ステップ

単位も範囲も違う見積を比較可能にする手順です。

ステップ1:自社の年間業務量を数える

  • 月間の仕訳数(会計ソフトから出力できます)
  • 月間の請求書発行件数
  • 従業員数(給与計算・年末調整の見積に必要)
  • 支払件数

この数字がないと、どの見積も概算のままです。 直近3か月の実績を数えるだけで、見積の精度が大きく上がります。

ステップ2:業務範囲を1枚のリストに揃える

前述のチェックリストを使い、各社に○×をつけてもらいます。含まれない項目は「別料金でいくらか」まで聞きます。

ステップ3:年額に換算する

月額だけでなく、決算・年末調整を含めた年間総額で比較します。月額が安くても決算費用が高い会社は、年額では逆転します。

A社 B社 C社
月額 30,000円 45,000円 38,000円
年間(月額×12) 360,000円 540,000円 456,000円
決算対応 180,000円 含む 120,000円
年末調整(10名) 20,000円 含む 15,000円
年間総額 560,000円 540,000円 591,000円

月額で最も安かったA社が、年額では2番目になりました。こうした逆転は珍しくありません。

ステップ4:自社に残る作業時間を見積もる

委託しても、証憑を集めて渡す作業と、質問に答える作業は残ります。ここが月に何時間かかるかを各社に聞き、「委託費+自社に残る人件費」で比較します。

安い会社ほど自社の作業が多く残る傾向があるため、この視点を入れないと本当のコストが見えません。

「料金表がない会社」をどう評価するか

Webサイトに料金表を載せていない経理代行会社は少なくありません。これ自体は不誠実の証拠ではなく、業務範囲が会社ごとに大きく変わる領域だからです。

判断の基準は、料金表の有無ではなく「聞いたときに具体的な数字が返ってくるか」です。

良い兆候

  • 「直近3か月の仕訳数を教えてください」と、見積の前提を確認してくる
  • 業務範囲を項目ごとに区切って、含む・含まないを明示する
  • 決算や年末調整の費用を、聞く前から提示する
  • 「この業務は当社では対応できません」と範囲外を明言する

避けたほうがよい兆候

  • 業務量を聞かずに「月○万円でできます」と即答する
  • 「だいたい全部やります」と範囲を曖昧にする
  • 契約を急がせる、期限付きの割引を強調する
  • 税理士資格がないのに「申告まで対応します」と言う

最後の項目は費用の問題ではなく法令の問題です。安さの理由がここにある場合、後から契約を切ることになります。

料金以外で総コストを左右する3つの要素

同じ月額でも、実際の負担は次の3つで大きく変わります。

① 証憑の受け渡し方法

郵送のみの会社だと、毎月まとめて封筒に入れて送る作業が残ります。クラウドへのアップロードや写真送信に対応していれば、その作業がほぼ消えます。月1時間の差が、年間12時間になります。

② 質問への回答速度

仕訳の判断に迷ったとき、当日中に回答が来る会社と3営業日かかる会社では、月次の締めが数日ずれます。締めが遅れると試算表が出るのも遅れ、経営判断に使えなくなります。

③ 月次報告の有無と中身

数字を入力して終わりの契約と、月次試算表に一言コメントが付く契約では、得られるものが違います。後者は数千円高いことが多いものの、「今月は売上が伸びたが売掛金も増えている」といった指摘は、料金表には表れない価値です。

経理業務そのものの効率化については経理業務を効率化する5つの方法もあわせてご覧ください。

安さだけで選んだときに起きること

料金表の比較で最安値を選ぶと、次のような問題が起きやすくなります。

質問への回答が遅い

月次の締めで判断に迷う仕訳が出たとき、回答が3日待ちだと締めが遅れます。単価が安い会社は1人あたりの担当件数が多く、レスポンスが遅くなりがちです。

担当者が頻繁に変わる

引き継ぎのたびに自社のルールを説明し直すことになり、結果的に時間を取られます。担当者の継続性は料金表に書かれていないため、契約前に体制を質問してください。

数字が返ってこない

記帳するだけで月次試算表が出てこない契約だと、期中に自社の状態が分かりません。安い会社ほど「入力するだけ」の契約になっている場合があります。

資格の境界を越えた提案をされる

確定申告書の作成や税務相談は税理士の独占業務です。無資格の代行会社が「申告まで対応します」と言う場合、税理士法違反の可能性があります。安さの理由がここにある場合は避けてください。

境界線の詳しい整理は経理代行の選び方|失敗しない7つのチェックポイントをご覧ください。

料金表を見るときの実務的なチェックリスト

契約前に、次の項目を1つずつ確認してください。

費用の構造
– 課金の単位は何か(仕訳/伝票/定額/チケット/時間)
– 1仕訳の定義は何か
– 上限や超過時の扱いはどうなるか
– 最低契約期間と解約予告期間

業務範囲
– 月額に含まれる業務の一覧
– 決算・年末調整・給与計算の扱い
– 月次試算表は出るか、いつ出るか

運用
– 証憑の受け渡し方法(郵送/クラウド/写真)
– 質問への回答期限
– 担当者は固定か、変更時の引き継ぎ方法

データ
– 会計ソフトは自社契約か委託先契約か
– 契約終了時にデータを自社形式で受け取れるか

最後の項目は見落とされがちですが重要です。委託先の独自システム内にしかデータがないと、乗り換え時に過去の帳簿を失います。

契約後に料金が想定と食い違う典型パターン

実際に相談を受ける中で多いのが、次の3つのすれ違いです。いずれも契約前の確認で防げます。

パターン1:初月だけ請求が跳ね上がる

原因は過去分の遡及処理です。期首から数か月分を溜めた状態で依頼すると、初月にその分がまとめて処理されます。通常単価の1.2〜1.5倍がかかることも珍しくありません。

防ぎ方は単純で、依頼時に「何月分から処理が必要か」を明示することです。溜めている月数を隠しても、初月の請求で必ず表に出ます。

パターン2:繁忙月だけ超過料金が出る

年に数回だけ取引が集中する業種では、平均仕訳数で契約すると繁忙月に超過します。決算期、季節商材の販売期、補助金の申請期などが該当します。

防ぎ方は、平均ではなく最大月の件数で見積を取り、上限付きの定額に寄せることです。年額で見れば、上限付き定額のほうが安く収まることがよくあります。

パターン3:決算時に別の請求が来る

月額に決算対応が含まれていない契約で起きます。しかも顧問税理士が別にいる場合、税理士側の決算報酬と、代行会社側の決算資料作成費用が二重にかかることがあります。

防ぎ方は、契約前に「決算のとき、御社と税理士でそれぞれ何をして、いくらかかるか」を1枚に書き出してもらうことです。役割が重なっていれば、どちらかに寄せて調整できます。

よくある質問

Q. 月額が「〇〇円〜」と書かれている場合、実際はいくらになりますか?

多くの場合、下限は「最小構成」の金額です。直近3か月の仕訳数と業務範囲を伝えて、確定見積を出してもらってください。概算のまま契約すると、初回請求で差が出ます。

Q. 料金表を公開していない会社は避けるべきですか?

一概には言えません。業務範囲が会社ごとに大きく変わる領域なので、個別見積が基本という会社もあります。ただし質問に対して具体的な金額を出さない会社は避けてください。

Q. 途中で料金は上がりますか?

取引件数が増えれば従量部分は上がります。問題は「同じ業務量なのに値上げされる」ケースで、これは契約書の改定条項を確認しておけば防げます。

Q. 顧問税理士がいる場合、経理代行を別に頼むと二重払いになりませんか?

役割が違うため二重にはなりません。税理士は税務申告と税務相談、経理代行は日々の記帳と経理事務です。ただし税理士が記帳代行も行っている場合は重複するので、どちらに寄せるかを整理してください。

Q. 最初から全部任せるべきですか?

段階的に増やすほうが失敗しません。まず記帳だけを委託し、運用が回ることを確認してから請求・支払・給与へ広げる進め方が現実的です。

Q. 料金表の「初期費用」は何に対する費用ですか?

主に導入時の設定作業です。勘定科目の設計、既存データの取り込み、証憑の受け渡しフローの構築などが含まれます。相場は月額の1〜3か月分ですが、無料としている会社もあります。無料の場合、その分が月額に上乗せされていないかを年額換算で確認してください。

Q. 契約期間の縛りはありますか?

半年から1年の最低契約期間を設けている会社が多くあります。導入時の設定コストを回収するためです。解約予告は1〜3か月前が一般的なので、「合わなかったときにいつ抜けられるか」を契約書で確認しておいてください。

Q. 相見積は何社取るべきですか?

3社が目安です。それ以上は比較の作業自体が負担になります。料金体系の型が違う3社(従量・定額・チケット)を選ぶと、自社に合う型が見えやすくなります。

まとめ

経理代行の料金表は、そのままでは比較できません。比較とは、単位を揃え、範囲を揃え、年額に換算する作業です。

  • 料金体系には従量・定額・チケット・時間課金の4つの型がある
  • 従量制なら「1仕訳」の定義を必ず確認する。数え方で3倍の差が出る
  • 決算・年末調整・給与計算は別料金のことが多い。年間総額で比較する
  • 「一式」表記は、業務リストに○×をつけてもらって中身を確定させる
  • 委託費だけでなく自社に残る作業時間を含めて総コストを見る
  • 安さの理由が資格の境界を越えた提案にある会社は避ける
  • 契約終了時にデータを自社形式で受け取れるかを確認する
  • 初期費用の有無と最低契約期間、解約予告のタイミングも契約書で押さえておく

料金表を読むうえで最も大切なのは、金額そのものより「何が含まれていないか」を特定することです。含まれていない作業は、必ず自社の誰かの時間として残ります。

そしてもう一つ、料金表には表れない差があります。質問への回答速度と、月次で数字が返ってくるかどうかです。安い契約は「入力するだけ」で終わりがちで、経営判断に使える情報は出てきません。数千円の差で、毎月の意思決定の材料が手に入るかどうかが変わります。見積を比べるときは、この2点を必ず質問項目に入れてください。

種火では、直近3か月の仕訳数と業務範囲をお聞きしたうえで、含まれる業務と含まれない業務を明記した見積をお出ししています。決算や年末調整が必要な場面では提携税理士と連携し、どこまでを当社が担うかを事前にご説明します。

他社の見積をお持ちの状態でのご相談も歓迎です。単位が違って比較できないという段階からお手伝いできます。仕訳数の数え方が各社で違うため、同じ土俵に並べるだけでも判断はかなり進みます。会計ソフトから直近3か月の仕訳日記帳を出していただければ、その日のうちにおおよその費用感をお伝えできます。

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